望讐小説九十八弾≪ 修羅の跡・・10 ≫

 「女は色々あるけ~ね~あんた、母を許してあげんさいよ」
「許すも何も何も知らんが、もう四日連絡が無いけ~如何する事も
出来んが」「そうか、連絡ないか」「うん、でも母が決めた事其処は
良いかね」「あんた・・」「もうママね僕弁えている、連れて逃げた時
はそうは思わんが、今となるとこうなる事は決まっていたのかな」
「あんた・・」「でも、母が良いと思って進む道なら僕は何も言えん、
母の代わり、あの店で洗いもんする」「ええ~」
「罪滅ぼし高校時代からそんなアルバイトしている、店で何言われ
ても構わん、母が逃げた事は事実、其処を補うわ」「あんた・・」
泣きそうな顔で聞いてくれる。
 大学に通いながら、居酒屋で懸命に働く正弘の姿が見える。
其れを見る為にか、喫茶店のママとあの皐さんがちょくちょく顔を
出されている。
 六月末、梅雨の時期、部屋に戻ると手紙が有った。
中身は母からだが、一言御免と書かれているだけ、何処に住んで
居るかも知らせてはくれなかった。
だが其の頃店の中で働いていると意外な事を聞く、あの常連が店に
来なくなった事、しかも母を追いかけていた二人ともと聞いた。
 店にも馴れて焼き物を任される正弘、漸く店内に顔が見える場所、
こうなるとお客も正弘目当ての若い女性が増えだす、
其れを見る度小夜子は親子だがと思っていた。
大学も最近は休まず通う、そうして部活も無く、まっ直ぐ店に来て
仕込みから習い健気に働く正弘の姿が見える。
(あの子、根性在るがね)母親に失望し、今度は息子かと呆れていた
筈の小夜子が、次第に正弘を認めざるを得なくなる。
 七月が来ても空はうっとおしく梅雨空、店ではこんな時期、食当り等
出易いから小夜子は神経をとがらせている。
「早苗ちゃん、手を洗いなさい、もう何度言ったら判るんかね、正弘、
料理の種類で調理台洗いなさい、包丁も同じくね」「はいっ・・」
返事が良い。
 然し好事魔多し、店から食当りが出てしまう、保健所から色々と
聞かれて店は一時休業、正弘も休みになる。
 数日後同じ様な症状が他店からも出る、すると食材を降ろす問屋
からが原因と判明、店は大迷惑、此処で一気に改装をと決めた。
 こうなると正弘も大学から戻っても暇、狭い部屋でゴロゴロしている。
(母さん、何処行ったのかな・・)思うのは其ればかり、幾ら考えても
正弘では理解しがたい部分が有るが、もう息子もやがて二十歳に
なる年、其処は考えてもどうにもならないと知る。
だが、又も母を思う、「え、じゃじゃ俺も・・」飛び起きて唖然とする。
 若しかして母は淫乱、其れとも根っから男のアソコが好き何か、
何でお母さん、と一瞬息を止める。
自分も一人に絞れず複数の女性と接して来た、今まで其処は何も
考えていなかったが、思えば当たる。
正弘も多かれ少なかれ似た様な道を歩んで来ているが、母と違うのは
溺れない事だけ、其処ははっきりと判る。
「なんと母さん、可哀そうに・・」我が身をセ-ブ出来ない部分が
有るんだと直ぐ思えた、男と女の違いはまだよく解らないが、
母ならあり得ると思う様に為る。
 其処にあの喫茶店のママから暇なら顔出せと電話が来る。
正弘も行こうと思った矢先、部屋を飛び出す。
 「来い・・」カウンタ-の中に連れて行かれ、コ-ヒ-の立て方や、
ジュ-スの作り方を教えるとママは外に出てお客さんと話をされ出す。
 「あらら、ま~正ちゃん、今度は黄昏のマスタ-かね」
「もう皋さん冷やかさないで下さい」ママが外で笑いながら皐さんと
並んで座られる。
 コ-ヒ-を作り席に持って行く、「此処に座れ、交代しよう」
ママが席を譲りカウンタ-に入られる。
「あのう、渡そうと思っていました、少ないけど月払いで・・」
「なあに、嫌だお金じゃない何で・・」「母の洋服代・・」
「何言っているん要らないわよ」「でも・・」
「何あんたお母さんの尻拭いするつもり、其処は褒めるけど相手見て
しなさい、皐はそんな事露も思わない考えもしない、要らないから、
心だけは頂いて置く」「皐さん・・」感謝して俯く。
「あんたもう其処は如何にも為らないお母さん大人、あんたを置いて
出るなど余程の事情が有るのかもしれないじゃない、待つのよ」
そう言われる。
 「外もうっとおしい季節、如何、夕方外に出ない」「えっ・・」
「食事しよう」「皐さん・・」「そうしなよ、いっそ好きな物大食いして
驚かせてやりなよ」ママが笑う。
 喫茶店から夕方出て二人は広島市内の流川歓楽地にと向かう。
粋な和風の店に入り、個室に二人は座る。
「お酒未だよね」「表立ってはそうですが・・」
「うふっ、外じゃ止そうね、部屋じゃ良いけど・・」「はい・・」
なんとも言えない心地、今まで接した事も無い種類の女性、
総てに余裕と気品と節度が垣間見れる。和やかに懐石を楽しむ、
正弘は初体験、小皿に盛られる料理が美しくて見惚れる、
無論味も最高と思えた。
一時間半そこで楽しんみ其のまま皐の家にと連れられる。
 「あんたが悩むから心配で、如何したら元気が出るのかと・・」
「済みません、こんな僕に・・」「・・、・・」
既にママから聞いて、何度も元気かしらと心配されていると・・。
「あのね、お母さん戻れないのかもしれない・・」「え・・」
「あの男癖が有るの、前から此処の連中は正体が読めているから
近付かない、ああして店に通いながら獲物を探して居るんだけ~」
「獲物ですか・・」「そう、前科が有る、何度も警察の厄介になって
いる札付きのおじさん」「皐さん」「待ってて、やがて捕まるけ~」
「捕まる・・」「そうみたい、この間署長に調べてと頼んで置いた」
「皐さん・・」「今度ばかりは許さない、何にも知らない田舎から
出たてのあんたのお母さんを・・」
「あのう、詳しく教えて頂けませんか母が捕まったとでも・・」
「そうハンタ-にね」「ハンタ-ですか」「そうよ、あいつら手分けして
手頃な女性を物色して歩いている、もう随分と若い頃からよ、
卑怯極まりない、もう少し待って何とか出来るならする」
「皐さ~ん・・」泣き顔で叫んだ。
詳しく聞きたいが其れ以上は話しをしてくれなかった。
 「あのね、正ちゃん一度広島から離れて見ない・・」「えっ・・」
「だって此処に居てても母の事が、だから一度離れなさいよ」
「田舎ですか・・」「帰れるの・・」「ううん・・」
「じゃじゃ頼みが有るんだけど・・」「何か・・」
「あんた郷お百姓さんだったわね」「そうです」「田仕事出来る」
「無論です」「じゃさ助けて」「奥さん・・」「ま~皐よ」笑われる。
 其処から意外な事を聞かされる、なんと皐さんの妹の里で
イチゴ栽培を始めて今は大人気だとか、大勢の観光客や広島市民
が押し寄せるイチゴ狩りに為ったと聞いた。
其の集落に妹さんが嫁がれているとも聞く、笑いながら父が進めた
縁談だったとも、しかも其処には理由が有る、人里離れた場所が
住宅開発を起こし一大広島のベットタウンと為っていると、
その土地を手に入れた父が妹を其処に居れたと笑われる。
 「ではイチゴですか・・」「そうじゃ無いんよ、手が足りないのは
田仕事、今アソコじゃ稗が蔓延して大変だって」「じゃ稗狩り・・」
「そうなのよ、行ける」「奥さんの頼みなら何でもする」
「嬉しい、居酒屋は話付ける」「其処は僕がするけ~」
なんとそう言う事になってしまう。
皐さんの頼みは断れない、まして母があんなことをしでかし逃げて
いる中、正弘は断れなかったのだ。
 こうして蒸し暑い中正弘は直ぐに現地にと向かう。
其処は広島から西北に進むと有るが、其処も未だ広島市内に為って
いるが如何見ても田舎そのものだった。
途中で色々聞いたが其処は今はオレンジタウンと名が出来る程夜中
オレンジ色のビニ-ルハウスが林立する場所とも聞いた。
 聞いたベットタウンを横目に谷に入り進む、
目当ての家がデカ過ぎてここでも驚かされた。

                          つづく・・・・。


















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