異淫小説102弾《獣を潜ませ生きる・・46》

 なんと、此処での喧騒は終わらなかった。
恵は忙しく電話をしまくり、此処の親子は心配そうにされている。
「ああ、大変じゃぞ」「何、叔母さん驚くがね如何しんさった・・」
「うん、拙い事は無いが大変」「何が・・」翔太がそう聞く。
「だって恵さんの電話を聞いていると事が忙しくなりそうじゃがね」
「良いじゃないか、学校も今年は入れるように恵は頑張って知り合いに
電話しているんだ」「だからじゃ、そうなると、お前此処は如何なる」
「どうなるって買ったじゃないか」「だからじゃ」
「もう何よ早く何でかいんさいや」「待て喉が・・」
酒を一気に揉む幸子、座り直して翔太に話す。
 「良いか、娘は大阪じゃろう」「そうなるよな」「じゃ母親は如何する」
「え、お・お母さんか、え~其れは此処に居てもかまへんぞ」
「お前がそう言ってもハイお願いしますとは言えんだろうが、独りになって、
お前其処を考えないと片手落ちじゃ」
「なんと、そうなるんか、拙いな、ねね、沙織さん、此処に居られても良い
ですよ、僕は構わんけど・・」「・・」返事されない。
「ほうら見ろ、お前たちが喜ぶ先は片手落ちじゃ、お母さん、そうですかと
は言えんぞ」「叔母さん、嗾けんさんなや拙いよ」
「拙い所を置いて話が進むからじゃ」「じゃ、僕は此処に来るのを後にする」
「後とは・・」「娘さんも大阪で落ち着くまでは心配じゃろう、如何かな
一緒に大阪で玲奈さんの学ぶ先が見つかるまででも良いがその間考えよう」
「成程な、でも大阪に迷惑が懸る」
「え、其処は良いのよ、独りで寂しいから大歓迎」「なな・・」
「お前、嫌と言われんだろうが、世間とは総甘いもんじゃない筈」
「じゃ、田舎の此処は如何しんさるん、同じ事誰かが言い出すだろうが、
此れから娘の行く先をそんな事で心配かけるのは其れこそ問題だぞ」
「判るけど・・」「じゃ大袈裟に騒ぎんさんなや、解決出来るがね」
「そうか、じゃそこんところを考えてくれんさい」「判りました」
叔母と翔太のやり取りは、既に恵みも知る事となる。
「お兄ちゃん」「おう、何とかなりそうか・・」
「うん、今年三月までには何とかしないと一年遅れるんよ」
「だな、何とかなるんか」「二つ宛が有る急いで戻る、必ず何とかするから、
其れで此処だけど、お母さん居て貰えへんの」「え、良いけど」
「あのね、お兄ちゃんがそんな返事、お母さん居ずらいがね、何とか考えて、
玲奈ちゃんは任せて」「そうか、小百合さん・・」
「うふっ、私にお鉢が回ったわね、簡単」「か・簡単って、小百合さん」
「あのね、考えようよ、あんた此処で暮らしても田畑や何から何までの差配は
無理でしょう」「うん、何時もとは居ないし」
「だよね、じゃ此処はお母さんの働き口」「え、意味が・・」
「あのね、此処の管理人よ、あんたお給料出せば良いじゃない、そうなると
お互い気楽でしょうがね」「え、そうかあ~そうだ其れが良い、そうか生活費
も其処で賄えるな、経費は別に出すし、なんと良い考えだ」
「お兄ちゃん、其れ良いわね、でも相手のお母さんの気持ちが先だよ」
「そうだな、お母さん聞かれましたか・・」「・・」
「お母ちゃん、何かいんさい、私は大阪でお世話に為る、此処は先が見える
までそうなるように頼んでみて、玲奈も頼むし」「玲奈、あんた・・」
「お願い」娘に懇願される。
「じゃ、其処はお母さんの意思を尊重していこうか、暫く見習いとして此処
でのんびりしててくださいね」「貴方、其れでは申し訳が無いがね」
「良いんです、娘の為と思えばなんて事無いでしょう、頑張りましょう、
毎月の給料は出しますからね、其処は世間体が有るから守ります、いろんな
人が噂されても良いじゃない、こんなやり方も有るんだと教えましょう」
「翔太さん、貴方凄い」なんとか嫌とは言われなかった。
「でも最初はお母さんも大阪に連れて行きたい、玲奈ちゃんも心配だろうしね」
「恵、それ良いな其れが良いぞ、じゃお母さん理解して下さいね」
なんとか形にはなりそうで、ひとまず全員が安堵する。
 明日連絡すると言い、親子を残して翔太達は家にと戻る。
疲れがどっと出て幸子はへ垂れる。
「うふっ、如何私の案・・」「良い、最高じゃが」
「貴方の為なのよ、逃がさないでね、娘が言うにあの子良いとさ」
「うん、そうなれば良いけどな」
「為れるよ、恵が本腰なのだから任せて居れば良いの」「うん・・」
そこは任せるしかない、翔太が如何足掻いてもとてもじゃ無いが其処は
出来かねるゾ-ンと思えた。
 二日後、親子は小百合の車に乗られて里を後にされた。
昨日は役所周りで忙しい、金も払い込んで総て翔太の名義に為る筈。
役所も農協も驚かれ、話はたちまち広がるだろうと思えた、
其れだから暫く親子は此処を離れたほうが良いとさえ思えた。
 雪が深々と降り注ぐ中、翔太は本を読んでいる、
其処に智樹が顔を出す。
其処から色んな話を聞かされた、あの家の事をいち早く聞きに来た親戚の
人が、真かと大騒ぎになったと聞かされる。
「田舎じゃしょうがないのう」「ほうじゃ、いい気味だとさ・・」
「え・・」「あの髭爺さん、寝込んだそうだぞ」「嘘だろう」
「嘘なもんか、前祝もしていたそうだぞ」「なんと・・」
可哀そうでも有るが、此処は娘の夢がかないそうと思うとそんな思いは一瞬で
吹き飛んだ。
 翔太も一度此処を離れようと、広島に出ておじさんを見舞、
其の脚で中国道に乗り上げ、落合に向けて車は走る。
既に宿の内部の改装が始まり、宿の親子も此処に滞在されていた。
冴香から谷の事を聞きながら翔太は此処はこのまま進めると思う。
 「で、里の話を今度は聞かせてね」
「ああ、其れで来たんだ、俺だけじゃ先があまり読めんしな」
そう言い、其処から里の話に為る。
 長い話、宿の親子もいつの間にか部屋で翔太の話を聞かれている。
「ま~良い事じゃない、あんた大地主ね」
「菜摘さん、もう揶揄わないで下さい、大変だったんだ」
「でも、あんたの家の跡の話しも良いわよ」「ええ、冴香・・」
「うん、アソコは何か産めそう」「産めそうなんか」
「アソコは何かが蠢いている、いいや重なるほど何かが見える、はっきりじゃ
無いけど見えて来たんよ、其処にあんたの笑顔が混ざっているよ」
「うひゃ~、じゃあそこで何か興そうと考えてるんだが、其れかな・・」
「沿うみたいだけど、物が何か判らへん、心を入れて見てもそれが何かが」
「良いわ、其処はやがて冴香ちゃんの脳裏にはっきりと浮かぶだろう、
じゃ考えても良いんだね」「うん、其処はそうして、冴香も母も賛成よ」
「ようし、そう見えるんなら鬼に金棒じゃね」
翔太はよほどうれしいのか満面笑顔、其れを見る宿の親子も笑顔を
魅せられている。
 「ねね、此処は順調よ、それでね谷は如何したいのよ」
「うん、考えていたんだが、此処は山ばかりだよね」「奥は皆そうよ」
「じゃ山仕事は如何なっているん」「どう、なにがね」
「もうこれは女性じゃ駄目だ、哲夫さん居られるかな」
「寒いし居ると思うけど」「光江さんに電話して連れて来てくれんかな」
「聞いてみるね」直ぐに菜摘さんが電話される。
「お兄ちゃん、何か考え在るね」「うん、後でな」
思いつめる癖は冴香には見抜かれていた。
 一時間後、光江さんや哲夫さんが家に来られる。
其処から翔太の話が始まる。
「うひゃ~何と、そうか其処じゃ其処が有ったぞ、仰山山積されているがね、
翔太さん、其れ使えるんか・・」「其処だけど二年以上寝かせた物が良い」
「有るが有るよ、役場がほとほと困っているが、紙の材料でしか売れない
しな、安い、其れなら話が早いが、如何使う」
其処から翔太が説明を始める。
 「なんとログハウスか、良いな其れなら直ぐにでも出来るぞ、今は製材所
で作り置きも出来るが、春には現場で組み立てれば適うぞ、凄いが・・」
「でも其れだけじゃ、若者向きだろう、お年寄りが・・」
「いんや~、今こそそれが良いんじゃろうが、浮かべて見んさいや、天井が
高くて、木の香り、床は滑らない材料で賄えば、若者もお年寄りの生活とは
変わり中々良いぞ」「本当だわ、凄いが、其れなら資金が少なくて済むね」
「それを他に回せるぞ」翔太も菜摘も喜んでいる。
 その夜はあの六人の男どもが集結、哲夫さんの話を聞いて喜ばれる。
光江さんは翔太の横で頷かれているし、冴香は本当にただで転ばん男だと
再度認める事に為った。

            つづく・・・・。