望愛小説103弾《獣が道を造る・・15》

 八月九日、裕太は忙しい、荷が満載で二日続けて広島に向かう、
其れはお盆が来るからだが、毎年の事、年の暮れとお盆前はそうなる。
従い帰りの荷物も多い、海鮮から雑貨を見回り大忙しで荷を積み込んでいる。
八月十日の戻りは何とか可部の家で休むことが出来た。
「ふ~お盆が来る頃は漸く朝晩が凌ぎ易いね」「言えるは、疲れる」
「あんた、此処で休みんさいや縁側が良いか」「良いね、甘えるか転がろう」
裕太は本当に縁側で寝転ぶ、眼下の川から心地良い流れる水の音が眠りを誘う。
 裕太が寝ている間に誰かが来た。
「ま~この人があの裕太さんかね」雅子、こいつが世話がやける男で、女心を
弄ぶどころは理解が出来ん男じゃがね」「あらら、じゃ義娘はどうなるのかね」
「ええ、あんた・・」「美代さんが言わしたから気に為っているんよね」
「ええ~でも嫁に出ているだろうが、幾ら亡くなられても其処は・・」
「構や~しないわよ、アソコもまだ母親は若いしね」
「ああ、聞いたがなんか可笑しいと・・」「うふっ、以前より可愛いとさ」
「じゃあんた」「この間久振りに家に戻りんさってな、いろいろ聞かされたが、
そんであんたにも会ったと聞いたからこうして来ているんだがね」
「じゃ、此処にはそんな事で今度で三回目だが」「何とか相手に会えたがね」
「え、では真に・・」「あの家は男が無い、この人どうかと考えていたんだが、
良い男じゃないね」「雅子さん・・」
「うふっ、こっちが如何思ってもそうはいかないけどね、在れば良いかなとは
思えたんだ」「なんと其処まで・・」「ねね、如何なのこの人」
「良い男じゃが、真弓が一度きんさった時出来るかなとは思えたぞ」
「さすが美代さんじゃね、じゃ何とか空気入れて見て」「良いのかね」
「良いわ、こっちもそうなれば弱み握れるしね」「呆れたぞ・・」
そんな話を居間で話されるが当の裕太は高鼾だった。
雅子さんは一時間で帰られるが、美代は縁側で寝る裕太を傍で睨むように
見詰めた。
 思えば車のパンクで知る間柄、でも楽しみをくれる男でもある。
御陰で平穏過ぎる日々が様変わり、今じゃ一週間に一度か二度来てくれる相手、
美代が今生きている中で大事な男に為りつつあった。
 二時間寝ると、起きてコ-ヒ-を飲んで裕太は家を出た。
其処では美代は何も話さないが、今回はあの真弓の実家の義母が来て色々と
本音を聞かされた後、思いは今までとは雲泥の差だった。
 お盆が来た、裕太は自分の家の墓に参り、先祖様に手を合わすと、
直ぐに家を出る。
「今日は・・」「まあま~あんた~よう来ちゃんさったな、上がりんさいや」
オ-バ-過ぎる程歓待される。
「良いわね義母ちゃんが待ち焦がれておりんさる、あんた持てるね」
「おいおい、冗談は後じゃ、お参りせんとな」
仏間で田舎特有のでかい仏殿に手を合わせ暫く其処に居た。
広島や島根県では初盆は賑やかな飾り物が仏殿を飾る、今は電飾だが、
以前は蝋燭が火を揺らし幻想的だった。
「あんた有難う御座います」「其処は良いけ、何時も真弓さんをお借り
してすみません」「この子は楽しいといんさるしこんな時は救われる」
泣きそうな顔をされて言われる。
真弓さんも、其処は黙っておられた。
「秋が来るが如何しんさる」「其処じゃがね、真弓には相談して居るんよ」
「任せて、今回から頼む人がおりんさる、ね~あんた・・」「ええ、俺・・」
「違うけ~、あんたの仲間じゃ」「ああ、耕一か、そうだ頼もう」
「聞いて先に頼んだけ」「そうかじゃ良いな、あいつらに任せると良いけど、
コメ減るぞ」「良いの、其処は、でもあんたら凄いがね、手分けしんさって里
を守るんだもん、真弓は聞いて尊敬する」褒められる。
 「それでね、あんたには相談が有る」「なんです・・」
「真弓ちゃん邪魔ですよ」「ええ、のけもんかね、義母ちゃん酷いぞ」
「でもこればかりはそうしないと怖いんよ」「何でじゃ、何も怖いもんは無い、
真弓が居るけ~」言いながら部屋を出る真弓。
「ねね裕太さん、この子此処に於いてはいけんかね、無理は承知じゃが・・、
もう一人に為るのが怖いけ」「え、其処は僕じゃ何とも、正直に真弓さんと
話されたら如何です」「怖いからいけんのじゃ」
「なんと、では聞いてみましょうかね」「聞くだけなの・・」
「え、そうなりますが・・」「じゃ辞める方が良いかも・・」「え、何でです」
「・・」そこから何も言われない。
「あのう何か問題でも・・」「・・」「義母さん・・」「・・」
「話さないと何も解決できませんし、お願いです何か言って下さい」
「実は・・」そこからか細い声で話をされ出す。
 「え、では其処を心配と、なんとそうなりますかね、僕はそうは考えて居ない」
「え、でももう相手が亡くなったんですよ、戻ると言われるのが怖くて怖い・・」
泣きそうな顔でそう言われた。
「じゃ、僕で良いなら一度話をしてみましょうか、でも責任は取れないけど・・、
聞くと僕も怖いかな・・」「ええ~、もう益々怖いけ・・」
要らん事を言ったと裕太は後悔する。
 違う部屋で真弓を呼んで覚悟を決め裕太は話を始める。
「ねね、義母さんは其処を心配されているんだぞ」「・・」
「な、どう考えておりんさる」「あのね、相手が亡くなったし、其処はこっちが
居座るわけには行かんでしょうがね」「それは理解出来るけど義母さんは居って
欲しいといんさる」「・・」「なな、少しだけ居ては如何、後で其処は考えたら
如何ね,無理強いは出来んけど・・」「・・」
「なな、何とかいんさいや、此処が肝心だから・・」
「あのね、あんたは真弓にそうさせたいんか・・」「ええ、僕の話しじゃ無いぞ」
「そうかもしれんがあんた次第と決めている」「え、意味が判らん、何で僕・・」
「真弓はね、此処で生きるなら生き甲斐が欲しい」「生き甲斐か・・」
「そう、其れが適うなら義母と暮らしても良いと思える」「じゃ生き甲斐は何ね」
「言わないし、言えないが相手が有る事だしね」
「ええ、意味が理解出来んが、何じゃ生き甲斐は・・」
「阿呆、よう考えんさいや真弓からは言えんがね阿呆・・」
そう言われて部屋を飛び出た。
 暫く一人に為るが、其の言えん話は何かと考え込む。
「良いかね・・」「お母さん、どうぞ」
「聞いたがね、真弓は其処を考えて居るとは知らなんだ」「え、其処とは・・」
「あのね、女には生き甲斐は何と思いんさる」「それは相手ですよね、ええ、
じゃああ、其処は・・」「うふっ、あんたは正直ね、真弓が其処は上みたいね」
「ええ、お母さん・・」「あのね、相手は既に亡くなっているし・・」
「そうですよね、じゃ何・・」「私が思うに子供かな、息子はアソコが弱いから
駄目だったしね」「え、えええ~子供ですか、でも相手が居ないが・・」
「・・」「お母さん、此れは無理でしょう」「・・」
「そうか子供か、成程な、生き甲斐は其処か・・」
考えさせられる裕太、腕を組んで考えるが、其処の正解は見えて居なかった。
 昼過ぎ重い足取りで家にと戻る、真弓さんが里を出るとなると仕事の事も有り
裕太にも大問題となる。

」     つづく・・・・。



























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