望愛小説103弾《獣が道を造る・・6》

 美津さんの家に招かれて向かう。
丁寧に広島での事でお礼を言われ、家に入る。
コ-ヒ-を出され裕太は飲みながら話を聞いている。
「先日は有難うございました、本当にお世話になり、済みませんでした」
「え、序でしたしお礼は要らんけ・・」
「そうは行かない、本当に感謝しているんです」
もう良いからというが何度も頭を下げられる。
 話はその事から始まる、既に事は進んでいるみたいだった。
「え・・」「娘が泣いて怒るからあいつは心底滅入り、二日前電話が来た」
「・・」「そんであいつに言ってやった、娘もそうだが、美津はそれ以上
じゃと」「・・」「そしたら、あいつ如何すれば気が済むんかと・・」
「・・」「気など如何でも良いが、離婚覚悟しんさい、相手も訴えると
言ったがね」「ええ・・」「そんでな、娘が大阪で弁護士と知合いでな、
直ぐに事を進めると息まいている」「なんと・・」
「其れで夕べ遅く流石に参ったのか、あいつが話し合おうと電話して来た」
話は続いて行く、聞くと其処は既に闘争状態と思えた。
「そんでな、あいつがとうとう本音出しよったがね、相手は会社の役員の娘
だそうな、行きがかり上そんな関係に為ってしもうたと、そんな理由でも
なんでも同じじゃが、と怒ったがね」
益々気は高ぶり、美津さんの話は終わらなかった。
 だが話を聞いてゆくうちに、此れは大変な事と思え出す。
「ねね、其れでは話し合いなど出来んじゃろうね」「そうなるよね」
「ええ、美津さん・・」「良いの、其処は既に弁護士に委託しているがね」
「まじ・・」「そう、娘が許さんと、大阪で動いているが」
「なんと、其れじゃ穏やかには済まんがね」
そう言うしか無い程決裂の文字が浮かんで来た。
 思えばこれはどうしようもなくその道にと進むと思えるし、
自分も此れから気を付けないとと思う話だった。
何とか腹の中のムラムラを出し切られたか、一時間後大きなため息をつかれる
と急に穏やかな顔に為られる。
「話はあんたには別にあるんよ」「え・なんですか・・」
そこからは裕太はドギマギして何か言われると覚悟する。
自分でも人に言われん事は有る、今迄の話を聞いただけでも怯えてしまう。
「あのね、以前から考えていたんだけどね、あんたの店の事」
「店、其処は自分じゃ無いし・・」
「ええ、そういんさると思うたがね、何処でも中身は御存知じゃけ、あんたが
しているんと同じよ」「え、でも、じゃ其れで良いとして店に何か・・」
「有るんよ、待ってあんたに会いたいと人を待たせている」「・・」
急展開で何事かとまたまた気が動転する。
 縁側に立たれ携帯で電話されている。
「うん、良いわ待って居るね」部屋に戻ると直ぐにきんさると告げると
何故か微笑まれた。
誰が来るのか皆目見当がつかない、おどおどとして待つしかなかった。
 時は来てしまう、庭に軽が滑り込んで止まる。
運転席から出た人を見た瞬間、裕太は腰を抜かした。
忘れもしない人、其れは裕太のみが知る事では有るが、なんとその女性は
裕太が高校生の時から憧れて居る人だったのだ。
「ええ~お姉ちゃん・・」「うふっ、やっと会えたね」「・・」
返事が出来ないくらい驚いている。
「上がりんさいや、こら裕太あんたは・・」「え・・、美津おばさん・・」
「あんたね、聡子に何したんね」「ええ、何もしては居らんがね」
「嘘コケ、あんた二度も聡子が風呂に入っている時覗いて居たろうがね」
「あ、あわわ~何々・・」「阿呆、其処は既に仲間が白状しているがね」
「え・・、ああ~くそ~隆か~」「うふっ、気が付いていたんよ,当時ね」
「ええ、では・・」「其処も最初から気が付いていたがね、誰かとは判ら
なかったけど、あんたら三度目は見えんかっつろうが」
「え、あそうだ、ひや~白状してしもうたがね、すみません」
裕太の慌てぶりに二人の女性は大笑いされる。
 そういえば当時覗く場所が無くなっていたのだ、窓のガラスが透明から
磨りガラスに変わっていた。
「なんと・・、見つかっていたんか」
「判るわさ、外でごそごそと音を立てるからね、怖かったが、小声で話す声は
子供と思えたんじゃ」「なんとでは・・」
「そうなる、お母ちゃんに話して磨りガラスに変えた」
其処でまた二人は大笑いされる。
「あのな、そんな事できたんじゃ無いがね、聡子が如何してもあんたに会い
たいとせがまれていたんだぞ」「ええ、では・・」
「阿呆、其処じゃ無いが仕事じゃぞ」「えっ・・」
裕太が落胆する姿にまたまた大笑いする相手二人、今度は睨みつけたくなった。
 裕太が高校二年生の時分、聡子さんは既に二十歳を過ぎた頃だった。
隆の家の近所だし、悪仲間では何時も聡子さんの話しばかりだったのだそれ程
美しく綺麗な女性、憧れは裕太にも芽生えていた。
「済みません、なんせ子供時代ですが・・」
「じゃじゃ今は如何ね、其処は要らんのかね」「え、美津おばさん・・」
「あはっ、其処は如何でも良いが、今回は仕事じゃしな、あんた店の事じゃ」
「え、店が如何して、何か有るん」
「大あり、あんたの店の外を任せて欲しいと、美津も今回は参加したい」
「ええ、意味が中身が見えんが店を如何するん」
「外販、今はそうは言わんねデリバリ-じゃが」
「デデ、デリバリ-って・・、ああ其れって車で販売か・・」
「そう、あんたの店に向かおうと思っても外に出れん人が大勢居りんさる」
「うん、じゃ其れを・・」「そう私らが組んで遣ろうと考えているんだ、
他にも考えたが、あんたが仕入れる値段は問屋から受ける品物と半値違うけ、
其処であんたをと聡子がね」「・・、なんとそうでしたか・・」
裕太は話題が変わると胸を撫で下ろす。
 四歳年上の聡子さん、当時より見ると益々綺麗な存在に為られていた。
「じゃ、其処をしんさると・・」「お願い,この事は誰しもが喜びんさる、
美津も時々介護に協力して来たが、本当に其処は皆難儀しておりんさる」
「確かに・・」「よその事は良くテレビで見るが、此処も同じじゃ、
いいや酷い、其処を裕太何とか整備するかね」
「美津おばさん、良いぞ其れ協力する」「本当か、聞いた聡子・・」
「感激しとるんよ、あんた良い男に為りんさってからに・・」
苦笑いするしかない裕太、先ほどの話しからおどおどしていた自分が
可笑しかった。
 それから車の話し、販売経路などる色々な問題が有るが、其処は裕太が
何とでもすると言い放つ。
「え、では車もかね」「うん、広島にそんな特殊な車の整備をする会社が
有る、其処に頼むね」「あんた・・」美津が喜んだ。
「ねね、裕太、こいつは今は軽い身の上じゃ、子供時代の事の続きしても
良いぞ」「ええ、何良いんさるん」
驚く姿を見て二人はまたまた大笑いされた。

            つづく・・・・。























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