望愛小説103弾《獣が道を造る・・3》

 裕太が今話をする相手、婆ちゃんにそそのかされて今が有る。
高校の途中で車の免許を取らされ、挙句に二年がかりで牽引や大型車迄取る。
其処には二人での話し合いの末の事だが、今仕事が出来るも総て婆ちゃんと
相談しての事だった。
 以外にも色々と裕太はして来た、郷で生きるには何が必要かを嫌程
聞かされて来た。
六年前、裕太が大型免許を取ると、直ぐに裕太の同級生が数人谷に残って
いた、二人を集めて婆ちゃんが話をする。
「ええ、お婆ちゃん、其れ良いぞ良いよ、するする・・」
同級生の仲間、隆と正之は感激していた。
其れが今動いている仕事だった。
隆と正之は地元で野菜造りを広める動きと、出来た野菜を集め仕分けする
作業を任される。
其れには裕太の家の納屋を改造し広めて作業場に変える、
車はトラック一台で始めた。
 それが二年後には冷蔵車も買い、そうして今裕太が広島で集める品物を
この地域で売る算段も婆ちゃんが薦めていた。
其処は婆ちゃんの一番下の妹の家族が請け負い、集落が数か所ある中で
メインの小さな町で店を開いている。
都会のコンビニとは少し違うが、此処では重宝な店、ミニス-パ-として
地元の人が喜んでくれていた。
無論値段も安い、裕太が広島で仕入れているから同じ品物でも安いのだ。
其処で売り上げは婆ちゃんの妹家族に為るが、ちゃっかり安いから売れる、
売り上げの5パ-セントは裕太の家に来る。
其れでも安いから利益は相当な物、山奥だからそう数が売れる訳じゃ無いが、
ソコソコは上りが有った。
無論、隆と正之も裕太が運ぶ野菜類の広島での上がり中で給料として貰える。
其れだからこそ皆が頑張れる、婆は其処を見越し何とか仕事には出来ていた。
 その体制が出来てから六年が経過していた。
「お前な、婆が言いつけるだけじゃ駄目だぞ」「え、何で・・」
「あのな、お前も考えんさいや、此処で何をすると楽しいのか良いのかを
じゃがね」「え、未だするん」「あほう、これくらいでは我慢できんぞ、
お前が考えて何かしんさいや、少しは金が溜まっているじゃろう」
「うん・・」「じゃ先にもっと良い事考えるんじゃ」「婆ちゃん・・」
「何でも良いが、今じゃ多恵も喜んで店をしている、娘も手伝うから良いが、
其処は其処、此処は未だ違うのを考えろ」「・・」
返事が出来ない、本当に貪欲か其れとも裕太の事を考えての事かは定かでは
無いが呆れる顔で裕太は婆を見た。
「良いな、女もそこそこに楽しみんさいや、此処じゃ顔が有るけ~大っぴら
には出来んじゃろうがね」「うん・・」「あはっ、でもしとるよな」
「ええ、婆ちゃん・・」「阿保じゃが、皆に知れるぞ注意しんさいや」
「え、うん・・」「馬鹿垂れが、白状したがね」
「ええ~婆ちゃん、酷いぞ」
「わしはお前の三倍も生きて居るがね、見えるんじゃ」「嘘・・」
「あはっ、其処は嘘だがのう、そうかなと・・」「呆れるが・・」
 本当に物凄い婆様だと何時も驚かされて来た、だが、婆の御陰で今が有る、
仲間も婆ちゃんには頭が上がらん状態と聞いている。
裕太が広島に出る事は二つの仕事絡みに為っているのだ。
毎週月曜日と木曜日は広島の市場に向かう、其処で野菜などを卸し、
戻りは仕入れる品物を多恵さんからメモを貰い集める。
往復トラックは荷物満載で動いて来た。
 三月二十二日、裕太は広島からの戻り道、あのタイヤがパンクした場所に
向かっていた。
横の広場に車を止めると、裕太はその家にと向かう。
「今日は・・」「は~い・・」奥から返事が聞こえる。
「え、あ、ああ~あんた・かね」「え、来ちゃいけんのか・・」
「ええ、そうじゃ無くて、今思い浮かべていたから驚いたんじゃがね」
「此れ、この間のお礼・・」「ま~綺麗じゃないかね、チ-ュ-リップは未だ
早いじゃろうに有ったんか・・」「外国からじゃ・・」
「なんと綺麗、有難う上がりんさいや・・」
二度目、奥に歩くと川が見れるぞと裕太は喜んでいた。
 縁側に座り、流れる川を眼下に見て長い時間動かなかった。
座る横に在のコ-ヒ-が出た、美味しいと飲みながらも飽きずに川を眺める。
「あんた、年は幾つじゃ名前は何・・」
そこを答えながらも目は川が流れるのを見詰めていた。
「そうかね、二十六か、良い年ごろじゃがね、付き合う女性おりんさるんかね」
「其処か、いるようで居ないかな・・」「意味しんじゃね」
「言えるわ、でも恋はしたいな・・」「出来ているんじゃろう」
「其処か、少し違うかな」「如何違うん」「おば、いや奥さんには話し辛い」
「あらら、不倫かね」「・・」「当たりか、気を付けんさいや」
「うん・・」「うふっ、正直もんじゃねあんた」「裕太です」
「じゃじゃ、私は美代です」「え、そう良い名前ですね、お年は・・」
「こいつ・・」頭を少し叩かれ笑われる。
 本当に二度目とは思えない程二人は話しが出来る、
其処は相手の女性が良いのか裕太は自分から此処に来ているのだった。
 美代は暇な毎日を過ごす身、其処に現れた青年を眩しそうに見詰めて居る。
今日は何を里から運んだのとか、仕入れて戻る品物は何かと聞かれても返事が
出来る相手、裕太にとっては珍しい事だ。
 知らずに其処に居る時間の経過が早かった。

            つづく・・・・。