望愛小説103弾《獣が道を造る・・7》

 裕太がその家を出る時は既に夕方、飯でもと言われるが、
其処は丁重に断り車で出る。
(く~何と会えたが、変わらんぞ・・)ハンドルを握る手に力が入る。
車は家には向かわず、冠山の麓に向かっていた。
慣れた家なのか車は庭に入ると、玄関にと向かう。
「あ、あんた・・」迎える女性が微笑んでいる。
 此処は裕太が通える家、しかも住む女性は四十過ぎの女性だった。
此処に通えるのは色々な訳が有る、あの強かな裕太の婆の峰子の存在が有る。
 峰子は幼い時から裕太を可愛がり育てて来た、其れも普通に可愛がり用
じゃない、とんでもない事を平気で裕太に仕向け、裕太も褒められるから
其処の道を懸命に歩いて来ている。
誰しもができない事を峰子は裕太にしいり今が有る。
「あんた、聞いたけ」「え、何を・・」「実はね・・」
ここでも来るなり驚かされる、今聞いてきた話は既に弥生は知っていた。
「うひゃ~じゃ其処を相談にきんさっていたんか、何で弥生が・・」
「あのね、店の土地は誰のもんよ」「ああ、其処か、なんとじゃじゃ」
「薄々だけど知られて居るみたい」「うげ~真か・・」
又しても今日はなんて日だと思うくらい吃驚仰天、裕太と手流石に今日は
度肝を何度も揺すられていたのだ。
話を聞くが信じられん位に事は進んでいた。
「では其処まで・・」「ええ、昨夜きんさって美津が言うには事を荒立た
せて離婚すると息まいてのう」「・・」
「そんで、話のついでじゃと、今度は弥生の事をぬけぬけといんさる、
あんたは良い事しんさって居るが、今度は仕事で裕太と関係したいと」
「あらら・・」「話を聞いたらこれは良い事じゃろう、しんさいと薦めた」
「うん・・」「其処であいつが断れんような女が仲間に居るといんさる、
誰かと聞いたら笑えたがね」「おいおい」
「だって、あんたにも憧れの女性じゃろうね」「弥生さん・・」
「良いじゃないね、私らも言わんが知っておりんさると思えた、
仕方が無いけ~此処じゃ見つかるがね」「だな、じゃ良いのか・・」
「良いも悪いもあんたは暴れんさいや、此処じゃ泣いて夜を耐える女は未だ
未だおりんさる」「おいおい」「其処は止め様がないけ、あんたは獣じゃ」
「言えるがあはっ、獣か」「だって、あんたとの抱合いは毎度死ぬ思いじゃ」
「え、きついんか・・」「きついなんて代物じゃ無いけえね、殺されている」
笑いながら話をする。
 高校時代からこの女性とは世話になって来た裕太、そのおかげで今ある店の
土地は弥生の家の土地、場所が良い所だし土地も広い、其処を婆が目をつけて
裕太をその方向にと進めていたのだ。
其れが運が良いのか悪いのか、弥生の前の夫と離婚させ、空いたスぺ-スに
子供のような男を育ててくれと峰子が弥生に懇願していたのだ。
 当時の弥生は気が滅入り、離婚したての我身、未だ三十六歳のころ、
峰子が作る道にとまんまと嵌り込んでしまう。
 だが、子供じゃと思いつつ峰子にそそのかされた挙句は何ととんでもない
子供だったのだ。
愛撫も抱き合いも既に完成された代物、迎えた弥生は挿入時から我を忘れる
程の快感に溺れる。
「嘘だ嘘嘘よ~」の連呼の最中、生まれて初めて飛ぶ事を嫌ほど知らされた。
 それが当時三十半ば、今は如何,四十を超えた年にでも待つ身が有る、
とんでもない小僧がこのド田舎で育って来ているのだ。
しかも其処には弥生が居る、高校三年生の時味わう裕太は婆の仕掛けにまんま
と捉まり、其れが最高だから何おかいわん、以後婆のゆう事は否応なしで
従ってきた。
無論弥生と手同じ事、土地の縁でと思うが其処は今じゃ違う、あの峰子さんが
仕掛けた罠に捕まっていたと知るが其れも良いと今じゃ最高な女の道を歩んで
いる弥生だった。
 弥生には妹が居るが、大阪で良い男を掴んで幸せに暮らしている、
郷では弥生が儘為らぬ道だが、其処も結構楽しい道だと今更思える。
何もかもが今から始まるおぞましい程のマグアイは誰しもができる事じゃない、
其れが有るから弥生は生きて行ける、今じゃ裕太命の体と心根今回も其処は
良い事だし、裕太を独り占めは出来かねる存在、何時かこんな事が有れば
許そうと思えて来たが、いざあの凄味が有る股座を相手は如何思うかを
考えると面白くも有る、それらが総てもとは弥生が使い育てて来た代物だ、
其処を思うと女冥利に尽きる。
如何足掻いても独り占めは不可能、わが身が嫌ほど知っていた、
じゃ今後どうするべきかを一時期悩んでいた頃が有った。
結果は一目瞭然、自分だけでは賄いきれ無い程の凄さ、其れをわが身が承知
しているから弥生は成り行きで自分が居る立場さえあれば其れで良いと最近
理解出来て来た。
歳も今年で四十の峠、其処で悋気などしている暇は無い、
相手が此処に通う事だけで其れだけを望み迎えている。
健気さは有る、四十でもまだ間に合っている、いいや今まで以上に快感は
磨かれ育てられ、今は真反対の立ち位置に為る。
風呂に湯を張りながら、毎度の事だが,今も胸が時めいているのだ、
笑うほど以前と変わりがない部分、裕太命は其れがそう言い聞かせてくれる。
「あんた~、良いよきんさい・・」「おう~・・」
その合図は今夜も弥生は雌の獣に為る合図だった。
 真夜中家に戻り、何食わぬ顔で隆と正之が用意した野菜類をトラックに
詰め込んで、未だ朝は明けない間に裕太は広島の市場にと向かう。
裕太は考え事をする時は何時もトラックを運転する時だった。
無論周りを気にしながらの事だが、此処は誰も邪魔しない場所と時間帯、
其れで考え事を練り今迄そうして来た。
だが、今回は其処でもまるで思いが違う、あの美津さんの話しから今度は
仕事の話と進んでいる。
中にはとんでもない女性が加わり、慌てた裕太、でも今考えると最高な
組み合わせ、仕事に絡んであの憧れて居た女性が仲間にかと思うと気が騒ぐ、
裕太にとって思いもしないシナリオ、其処は如何描いても自分では仕向ける
ことが出来ない位置、其れを美津さんが起こしてくれたんだと今じゃ大感謝、
わくわくしながらトラックは一路広島の市場にと邁進する。
 午前七時過ぎ、何時もの飯屋で朝食を取る、其れは必ず寄る食堂、
日替わりに美味しいおかずを出してくれる。
「おう~田中さん、今日は顔色が良いよね」「おばさん、判るんか・・」
「え、どれ本当に当たりかね」「ええ・・」二人は大笑いする。
ここでも裕太は一時の安らぎを受けていた。

              つづく・・・・。