望愛小説103弾《獣が道を造る・・8》

 「今日は・・」「は~い・・、ま~あんた、上がりんさいや」
裕太が来ているところはあのトラックのパンクで知り合う家。
「もう梅雨かね・・」「やがてはそうなる、空もどんよりしているしね」
美代は毎週一度は着てくれる男に為る。
月曜か木曜日はそんな気持ちで待って居るのだ。
「今日は此れ・・」「アララ、バ-ムク-ヘンじゃね、有難う」
他愛無い土産だがもらう美代は嬉しい。
 「ねね、郷は如何何か有った・・」
一番それが気に為る美代、話は其処から始まるのだ。
郷とは関係が無い此処は、裕太がのんびりと出来る場所、何から何まで色んな事
を此処で話せるのだが、其れが唯一楽しみなのが美代、
今日もワクワクしながら待ち構えていた。
「何にも無いが・・」「嘘じゃ、いんさいや其れが美代の楽しみじゃけ・・」
「もう、他愛無い事じゃぞ」「良いが、・・」
「そんでも聞きたい、聞かせてくれんさいや」仕方なしで裕太の話が始まる。
 「うひゃ~何とあんたもそんな事しんさったんかね」
「子供じゃろうが興味は有るが・・」
「あはっ、そんで覗かれた相手は、大した女性じゃがね」「え、何で・・」
「だって気が付けば驚くし大騒ぎじゃろうがね」「あ、其処か・・」
「そうだよ、女には大変な事じゃろうが、風呂場で覗かれているんだぞ」
「だな、だな」「それが大騒ぎせんとガラスを変える等粋じゃないか」
「粋なんか・・」「そうだ、お母さんも聞いて騒がず交換じゃろう」
「・・」「なな、そうだろうがね、綺麗な人かね」「うん、憧れだった」
 其処から今回の仕事の事を話しだす。
「ま~じゃその奥さんも相当な珠じゃね」「え、どっち・・」
「あんたを呼びつけた女性」「ああ、美津さんか、そうなるのかな・・」
「当り前じゃろう、男の弱みに付け込んでおりんさろうがね」
「あ、そうか其処ね、参ったが・・」
「判るは、其処を見抜いて今度の仕事じゃろう、良いぞのりんさいや」
「え、美代さん・・」「良いぞ此れは相手が頼み込んで来た事じゃしな、
其れに儲けは少ないが此れは里を動かせるぞ」「え・・」
「従い其れをしんさい、そうなると視野が開けて来る。あんたの里はそうなる
と何でもこなせるほど元気が出るぞ」「美代さん・・」
「あのな、世間はうざいが反対に利用すれば凄い事に為る」「・・」
「一番は毎度の食事に関係するし、其れに生活に欠かせない品物も有る、
其れが出向いてくれるなら尚都合がええけ、世間は大歓迎じゃろうがね」
「・・」この男は自分で動かんでも周りから色んな事が集まると知る。
「ねね、あんたの事教えて・・」「何・・」
「女性じゃがね、おりんさろうが・・」
「うへ、其処かおらんでも無いが言えんぞ」
「ええ、何でね、此処は里と離れて居るがね聞きたい・・」「其処は駄目です」
「いんや~聞くぞ」「ええ、美代さん」「なんでも知りたいがね、聞かせて」
「言わんが・・」こんな問答を始める。
「じゃじゃ美代さんの事聞かせてくれたら考える」「考えるの、何でよ」
「普通ならどうでもええけ、勉強に為る事なら聞きたい・・」「なして・・」
「僕は今は手習い中」「あはっ、そういんさるんか遣れんのう」笑われる。
 此処での会話は楽しい、相手が美代さんだし、如何見てもまだ女の中、
真ん中におりんさると思える。
だが此処では旦那さんの顔を知らん、其処を話してはくれていない相手だ。
「じゃじゃ、今度来る時聞くよ」「じゃ来ないわ」
「ええ~あんた相当ないけずね、来んかったら美代が悲しいけえね」
「そういんさんなや、楽しい会話だけで大満足じゃしな、其処を話し出すと
後が怖い」「何でね・・」「理由が有るんじゃ」
「何が理由ね、相手の女性の事聞くだけじゃろう」「聞いて如何しんさるん」
「聞くだけじゃが」「尚更無駄」「そうは無いけ、聞けばあんたが好みが判る」
「判ったらどうしてくれるん、だれか紹介してくれるんか」「ええ、あんた」
「そうじゃろう、聞くだけなら要らん事、世間では色んな話や事故が有るが、
其れを聞いて、自分にそうなれば困る話は沢山あろう、そんな話なら参考には
聞きたいけど、自分がしてきた道など他人が聞いても詰まらん」
「え、じゃ聞かせてはくれないの」「嫌です」「なんと・・」
呆れるが裕太は口が堅いと思えた。
 「今度来る時は聞くからね、如何してもあんたの事が知りたいんだ」
「はいはい、もう来ないです」「ええ~あんた~・・」
そんな話をした後裕太は其処を出る。
見送りは必ずしてくれた、車が見えなくなるまで手を振り送ってくれた。
 自宅に戻ると、未だ作業場に隆と正之が居る。
「おい、聞いたぞお前な・・」「ま、部屋に上れや、其処で・・」
二人は母屋に入る。
「おいおい、美津さんが・・」「ああ聞いたか、驚いたぞ」
「そうなんじゃ、遣りたいと・・」
「良い事じゃ無いか、おっか~も大賛成じゃと・・」
「その話な母から聞いたが・・」「なんと、正之は誰からじゃ」
「俺も叔母からだ」「ええ・・」
噂がこうも早く蔓延しているとは裕太は知らなかった。
 其処にマンがええのか悪いのか婆が家に戻る。
「婆ちゃん」「往々、雁首並べんさって悪巧みか、そうじゃ無さそうじゃ、
こいつらだけでは何も出来ん奴らじゃね」「え~婆ちゃん、其れは酷過ぎ」
「酷い、言われんようにしんさいや、其処は変えんぞ」「なな、裕太・・」
「うふっ、黙って聞き流せや、婆ちゃんには勝てんぞ」「言えるわ・・」
二人が頷いた。
「そんでな、なんともう一人加わりんさると」「え、正之誰ね」
「俺の家の奥におりんさる、真弓さん・・」「真弓・・、誰・・」
「裕太、嫁じゃが、其れが物凄い美人」「ええ、聞いてないぞ、おるんか」
「居てる、三年前にきんさったが」「なんとそうか」二人は聞いていた。
「だがな、運が悪い人」「何で結婚されたんだろうが・・」「それが病」
「病何・・」「癌だそうだ」「ええ、若いじゃろうが」「若いから遣れん」
「なんとそうか、其れで・・」「入院された、其処で何か仕事をと・・」
「なんとそうかね」知らない隆と裕太は初めて聞く事に為る。
「じゃ、その人も参加かね」「ああ、三か所に分かれて動くといんさる」
「裕太知っていたんか・・」「ううん、二人は聞いているが知らんぞ」
「はいはい、どうぞ」「うほう,和菓子か、凄いぞ」
「裕太が買って戻ったんじゃ」「よばれるわ」婆が其れを見て笑う。
「お前らは根性無じゃね」「ええ、婆ちゃん」
「あのな、お前ら此処ではもう既に必要な男に上っているが、其処を使えや」
「如何使うん」「あほう、女じゃろうが、なんでせん」
「ええ、できんが田舎じゃばれる」「ばれんかったらするんか・・」
「それは・・」「ははん、隆は如何ね正之は一人じゃ無理じゃしね」
「俺もそうなるかな」「情けない奴らじゃね」「婆ちゃん教えてよ」
「阿保くさ子供のころなら教えちゃるが、今は大人臭いわ」
「ええ~・・」二人は驚いた後大笑いする。
「本当に詰まらん人生じゃね、此れじゃここらから若いもんが逃げる筈じゃね」
「婆ちゃん・・」「世の中楽しく渡れ、一度きりの人生じゃろうがね」
そう言われれば何も言えない、本当にここ等じゃ何も起きんし出来んと
観念している二人だった。

            つづく・・・・。