望愛小説103弾《獣が道を造る・・14》

 色々有った七月も過ぎ早くも里はお盆前に為っていた。
聡子さん達の仕事は順調、又それが少しづつ中身が変わる、其処は店もだが、
裏に小屋が建てられ、其処で働く婦人が二人、仕事は総菜類を作られている。
販売に出ると、多くの人が其れを望まれて居る事が判明、考えればお年寄り
は煮物は出来るが、油関係は怖い、其処で中華や揚げ物はその小屋で作る事
に為った。
何事も良いと思えばする、其れが皆の御陰だと裕太は思える。
あの真弓さんも一週間後には現場に戻られて汗を流し車で動かれているし、
裕太の家にも毎週二度顔を出されていた。
 「お盆が来るな・・」「うん・・」「真弓の家もじゃね」「・・」
「お前、いきんさいや」「え・・」
「良いからむかえや、挨拶に来られた時驚いたぞ」「え・・」
「阿呆、真弓の義母さんだが・・」「え・・」
「疎いぞ、あの人は若く見える、真弓がゆうにはなんか最近幼少化だと・・」
「幼少化って・・」「ああ、女が幼い自分の姿に戻りんさる」「え、有るん」
「お前知らんだろうが有るよ、縋りついていた相手が亡くなられたんだぞ、
しかも若い、其れで気が可笑しくなるんだ」「なんと・・」
「でも、為る方向が全く良い」「ええ」意味が判らず裕太は婆の顔を見る。
「あのな、アソコは今度は男手が無い、だから助けんさいや」
「え、するの・・」「当り前だ、お前がせんで誰がする」「・・」
「あのな、お前はアソコには堂々と出入りできるじゃろうが、婆が言わん
でも判るよな」「判らん・・」「阿保垂れが・・」頭を叩かれた。
 八月七日、美津さんに呼ばれて家に行く。
「おう、聡子さんも居るんだ」「嫌な言われ方じゃがね」
「そうじゃ無いが、期待していた」「何でよ、もう何を期待しているの」
「其処は言わんが」「ああ、きんさったか・・」
未だ外は暑いが朝晩は凌ぎやすく為り出す。
「夕ご飯食べてね」「え、良いのか・・」
「どうぞ、聡子と拵えたがね」そう言われる。
「裕太、風呂入りんさいや」「ええ、良いよ帰ると入るし」
「其処がいけんじゃろう、美津が頼んでいるんじゃぞ」
「え・・、何か有るん」「大ありじゃ、あんたならね」
意味深な事を言われる。
仕事関係で付き合う相手、最初はそうじゃ無かったが今じゃ同じ釜の飯を
食う仲間と思えた。
 言われるままに風呂を頂く、そうして出ようとすると脱衣場に新しい
下着が置いてあった。
「あんた~、其れきんさいや」「ええ~」気に為る時にそう言われる。
裕太は従う、なんの外連も感じず真新しい下着をはいた。
「浴衣もよ」今度は居間から聡子さんの声が聞こえた。
言われるままに着替え居間に行く。
 「ま~良いじゃない、此れ良い」「本当、なんか家に居る旦那の姿じゃね」
「言えるが~若い旦那様だ事」揶揄されているのか二人は裕太を出しに、
笑われる。
「さ、飲もうか・・」三人は居間で食事を始める。
「ね、あんた、今後も頑張ろうね」「うん、ああんた達の御陰で、ここ等も
元気が出るといんさる」「そう、でも其処はあんたの御陰だし、私らは、
毎度仲間内で楽しんでいるだけ、でもそれが結果良いと為れば嬉しいがね」
「だな・・」そんな話をするが裕太は落ち着かない、今迄こんな待遇は
されて居ない、寄られると仕事の話しかと来ている身、違う感じがする。
 「酒が進まんがね」「うん、なんか変」「何がね」
「あのな、美津さんと聡子さん」「え、違うって何ね」
「うん、普通には見えんが」「何で何で・・」二人は顔を見合わせる。
「裕太、あんた人の思い判るんかね」「判る訳が無いぞ」
「そうだよな、でも当たっているが」「ええ、何が当たった」
「あんたの思いじゃがね」「え、嘘なんも思って無いぞ」
其処で三人の会話が途切れた。
ビ‐ルを口に入れる三人、無言が続く。
「なな、何か在るね」「・・」「美津さん聡子さん・・」
其れでも話は始まらなかった。
 暫くすると・・、「実はなあんたに相談が有るんよ」「何・・」
美津さんが口を切られる。
話しは考えても居ない事、其れは嬉しくも有るが驚かされた。
「ええ、では正之の縁談か・・」「そうなのよ、美津が回る中で聞かされ
たんだけど、あんた佳恵ちゃん知っているんか」「佳恵・・、何処の」
「別所じゃがね、二歳年下だと聞いている」
「・・、ああ~居た居た、ええでも大阪に出ておりんさろうがね」
「そうなのよ、でもお盆には戻るといんさる」「で、その話は誰から出たん」
「母親じゃが」「うひゃ~まじか、本当なら良いぞ其れ,美容師だろう」
「そう、それでね、子供の時から憧れて居たといんさる」
「なんとそうか、良いぞ正之か良いな」「あんたは未だしちゃいけんよ」
「え、俺か無い無い・・」「それが良い」
「ええ、良いのか他人事だからそういんさる」
「そうじゃ無いが、あんたは別、な~聡子」「あんたは未だ其処は駄目」
「駄目か」「そう私らが居るけ」「居る、意味が・・」
「疎いね、未だ私らは女ですよ」「其処は判るが、其れが・・」
「全く木偶の棒じゃね、意味が読めんかね」「意味・・、判らん」
「阿保じゃ・・、もうこうなると飲むぞやけ酒じゃが、美津さん・・」
「往々、飲もうか、こいつは女を知らなさすぎじゃしな、遣り切れんがね」
「ああ、そうじゃ・・」なんと急に酒が進み始める。
 「・・」言われた意味を考えだす裕太、だが其処は有りかなとは思えたが、
機会を失って久しい、出会いがしらなら有るかもと思えるが、
今となれば仕事仲間に為っている。
どちらも田舎では捨てがたい女性、しかも今じゃ裕太の片腕の位置に有る。
「あんたも飲め、木偶の坊の裕太・・」「ええ、聡子さん・・」
「阿呆、覗いたままか・・」「ああ~其処か・・」
「何が其処かじゃ、馬鹿垂れが、女が酒を飲まないと言えん事じゃろうが、
薄情もんが・・」「ええ、聡子さん飲み過ぎじゃろう」
「飲んで遣るわ、もう阿呆・・」
手が付けられん状態になりつつある、美津さんも煽る様に酒を薦め、
呂律が回りにくい程酔われて行く。
 午後十時過ぎ、裕太は着替えを抱えて庭に出るが流石に酒を飲んでいる
身、車は乗れない、庭の隅に有る自転車で家にと向った。
 「え、何で戻った・・」「ええ、婆ちゃん・・」
「何でじゃ嫌われたんか」「そうじゃ無いぞ向こうからいんさったが」
「・・、あ・ああ~じゃじゃ婆ちゃん仲間かね」
「え、あはっ、出来んかったんか、なんとのう其れは不味いじゃろうが」
「何がじゃ・・」「阿保じゃお前は、寝ろ、役立たずじゃね」「・・」
家に入るなりそう言われ、ふてくされて納戸の寝間に倒れ込む。

               つづく・・・・。