望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・9》

 母屋から離れた風呂に一人で入り、少々疲れた体を癒す。
風呂から出ると、居間で貴子さんが待たれて居て、澄人はジャ-ジ姿に
変えて座る。
「なんと広い屋敷ですよね、ここ等はそんな家ばかりでしょうか・・」
「え・・」言われて貴子が苦笑いする。
「あのな農家はこれくらいは普通じゃ、此処は蔵が無いが、明日にでも散歩
すれば真っ白い白壁建物が見えるだぎゃ」
「え、でも母屋でしょう此処、隣に有るのは・・」
「納屋じゃがね、昔は其処に牛が入っていたよ、そうじゃね昭和の半ば過ぎ
までは何処の家も牛が田畑を耕す動力だった」「え意味が、何で牛が・・」
そこから色々と話を聞くが、なんとそんな事は全て初めて聞く話、農耕馬は
聞いた事が有るが、牛が其れをするとはと驚きのまま、この家の母親の昔話
を興味が在るから聞いて居た。
 話が弾む、ワインがもう二瓶目に入り、いつの間にか娘が風呂から出て、
貴子さんの話を澄人と共に聞かれている。
驚く澄人が良いのか笑い顔で聞かれていた。
 「じゃ、なんですか、牛は何で今居ないんです」
「其処は既に最初は小さな耕運機が入り始め出す。其れが暫く続いて来たが、
今じゃそんなこまいもんは無くなった取って代わったのがトラクタ-じゃ、
其処に移るに色々訳が有って、高価なんじゃ、内も欲しいからお父ちゃんが
生きて居る頃手を出した、しかもその金は娘が背おうてな・・」
・・」「え、娘さんが背おうって・・」「その代金を作ってくれた」
「ああ、では、聞いた話では何かの為名古屋に来たと・・」
「そうだぎゃ金の為じゃが、有難かった、其れから仕事が偉い楽になって、
他所の田もするから小銭は入るしな、娘の御陰だ」
 又も其処から話を聞いた。
人出が少なくなる、都会より重労働だと若いもんを逃がすまいと、各家では
金を叩いた、借金でそんな機械を購入し始めたと聞かされる。
若者は其れでも都会を目指して出て行く、有れよあれれと思う間に、
今が有る其れが事実じゃと嘆くように言われた。
「でも何とか暮らせるんでしょう・・」
「あはっ、其処か、無理な話じゃがね、考えてみるだぎゃ、米なんぞ幾らに
も為らん、大掛かりなら多少は残ろうが、こまい細々と耕す土地だがね、
高が知れている、農機具の支払いすれば残らん、其れだから若者は逃出す」
「なんと・・、では生活は・・」
「あはっ、其処か、年寄りを体たらくにする産物が有った」
「産物、ですか・・」「そうだぎゃね、其れは年金じゃ、国が全国総ての
年寄りに年齢を決めて毎月金が来る、しかも当初は差別が有ってな、積立て
年金など農家じゃ誰も払いきれん、そんでな国は五年分を支払えば、満額
出ると、其れで皆が農協で金を借りて払った、其れが昭和の半ば頃かな、
疑いつつも金は納めたが、其れが今こんな田舎を駄目にする根源じゃ・・」
「なんと、其の年金が仇でしょうか・・」
「いんや、そうは言っても毎月六万少しの金は有難い、年寄りにとっては
助かる金だぎゃ・・」「・・」
「澄人さん、田舎も考えると暢気でしょう、其れが年金生活、孫が里に
来ると、其処はその金が目当てだと皆が笑だがねうんだぎゃ」「え、じゃ」
「今じゃ有難いお金に為りつつあるわ」
「そうなんですか、知らないから、そうかじゃ生活は何とか出来るんだ」
「だから、子供は遠慮なく親を置いて出て行く、災いでも有るが生きるに
大事な年金、私も後十年少し待てばそうなるよ」そう言われて笑われる。
 「では今は苦しいのですか・・」
「そうなる、仕方が無いだぎゃ年ははよう来てくれん、皆平等に積重ねる
だけだろう」「言える、そうかなんと聞かんと見えん話を聞いて感激です」
「え、あんた・・」「だって田舎を全然理解していなかった、テレビで
見るくらいしか、其れが今回旅に出て、知る事に為りそうです」
「そうかね良い事じゃ、田舎も住めば満更捨てたもんじゃ無い、携帯も、
スマホもテレビも有るが・・」大笑いされる。
 「今日は色々参考になる話が聞けた、其れと蛍、綺麗だったな・・」
「もう遅いから飛んでいないだろう・・」
「澄人さん、蛍の群游見れる場所が有るよ」「え、本当、群游とは・・」
「舞い踊る姿・・」「なんと沢山ですか・・」
「悲しいけどね、谷に人が居なくなった場所がある、其処に向かえば最高に
綺麗な光景が見れる」「凄い、じゃ明日行きたい案内してくれます・・」
「・・」「そうか、アソコなら良いぞ」
「では此処を出て行かれたんですね・・」
「そう、昭和の半ばにはこぞって都会に向いて人がのう・・」
又あの暗い姿に逆戻り、仕舞ったと澄人は思った。
 気持ちとワインの味は比例する、今口に含んだワインは苦かった。
 「そろそろ寝ましょうか・・」「え、僕は良いけど、そうか貴子さん」
「阿保抜かせ、年寄り扱いかね・・」「え、違います」「お母さん・・」
「うふっ、楽しいけ遣れんだぎゃ・・」笑われた。
 「行きましょうか・・」「え・・」「私の前はお姉ちゃんが使っていた」
「家の奥ですか・・」「ううん、納屋の二階が子供の部屋に為っていたの」
「え・・」「そうじゃ、牛がいなくなるとな、二階を改造して住まわせて
いたんだ」「なんと、では母屋は・・」
「私だけ、時々寝てくれるが、最近は一人ボッチじゃがね」
そう言われる中、娘さんに従い母屋を出た。
 母屋を出ると横に納屋と言う建物が有る、一階は農機具や藁が積まれて
いるのが見える、満月の夜、二階に上がる階段を澄人は従い上がる。
 「ええ~・・、なんと綺麗に出来ているが・・」
「姉の趣味よ、嫌いじゃない・・」「良いわ、そうか姉妹で部屋を」
「座って、ビ‐ルなら有るけど・・」「頂きます、窓開けて良い・・」
「網戸は開けないでね、蚊が来る」「はい・・」
 涼しい風が舞い込んで来る、其処にビ‐ルが来て澄人は飲み始めるが、
なんと外は青白い景色、月の灯りがそうさせていた。
「良いな、落ち着く・・」「・・」
笑いながら佳恵は絨毯が敷かれている部屋でビ‐ルを飲まれる。
「あのう、お姉さんから何か言われましたか・・」
「其処ね、もう強引なんだか呆れた」「・・」
「佳恵、最高な男を送り込む、逃がさないで、姉妹で縋り付いて離さない
でよ、逃がすと絶縁する、だって・・」「うひゃ~言われましたね」
「ええ、何でそうも言うのと聞いた・・」「なんと返りました・・」
「抱かれた後判ると・・」「ええ・・」
「でしょう妹にそんな大事な人を送込んでからに、佳恵は何も知らない、
困る・・」「・・」「でも聞いたら感謝だけ、本当に有難う御座います」
「え、其処は別」「別とは為らない、姉が恩が在る、其処だけは間違える
なと、澄人さんは導いてくれる、後は私があんたの分大事にすると・・」
「・・」「それで、三度も電話してきて縋り付いてて甘えるだけで良い、
あんたは値打ちが有るから相手は解るからねと、もう幼稚園児じゃ無いと
思った」「・・」「でもね、其れほどの男を此処に来させてくれた、姉の
気持ちが嬉しくて・・」「・・」
感激し聞いて居る澄人、益々喉が渇きゴクンゴクンとビ‐ルを流し込むだけ。
 「佳恵さん・・」「・・」俯かれて返事は戻らない。見ると浴衣が似合う、
本当に似合っていた。
 「佳恵さん・・」「・・、なんです」「綺麗・・」「嫌恥ずかしい」
「綺麗です・・」「嫌です・・」「良いや綺麗・・」
「田舎者なの言わないで・・」「綺麗・・」「意地悪ね・・」
「それ以上の言葉を知らない、だから最高に綺麗・・」
「貴方・・、卑怯・・」「え・・、何で・・」
「攻撃される身になって、如何返事すれば良いの・・」「うん、綺麗・・」
「貴方~・・」浴衣の裾から素晴らしい脚が見れた、
其れが二人きりの部屋で最初に感動した部分だった。

                つづく・・・・。

























ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント