★本日開始★望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・初回》

 (ふ~、何とか出来たな・・)部屋の中を見渡して、何時に無く感慨無量な
面持ちで澄人はガランとした何も無くなった部屋で、
最後のタバコを燻らする、立ち昇る煙に澄人の家族が浮かび上がる。
(親父,オッ母~、嘉人~・・)心の中は慟哭まがいの叫びが起こっていた。
 思えば昨年、あの忌まわしい交通事故から澄人は変化させられる。
可愛い弟の結婚が控えていた昨年五月十五日、この名古屋からお土産を積ん
で向かった、熱海の手前に悪魔が待って居た。
 静岡県の清水を過ぎる高速道で多重衝突に巻き込まれていたのだ。
しかも大型のトラックと後ろのこれまた大型の車に挟まれて、
車は残骸極まりない姿で残されていた。
無論、中に居る親父と母親と弟は人の形を残せないほどの姿だと聞かされる。
 その時澄人は名古屋の小さなタウン雑誌の会社に居た。
知らせを聞いて、飛び出るが、夜中到着するも既に其処は三人の目を覆う形
の残骸しか見られていない、憔悴する中、何も声も涙も沸いては来ない、
衝撃がでかかった。
相手先も来て頂いていたが、既に迎える本人が死んでいる、
泣疲れた相手の女性と家族、其れが未だに夢の中に出て来る光景、
何とか事故の後色々有ったが、こちらには落ち度は無い、
でも家族は今は居ない、其れが現実、本当に一年間は地獄の中だった。
 平成二十五年五月事故の一年後は既に新しい気持ちで始めようとして
いるが、いかんせん此処には其れを迎える家族が消えていた。
 五月の其の事故を迎える一周忌、その日を機会に此処を引払うと決める
澄人、部屋をかたずけて、新しい部屋にと荷物を送っている。
 (親父・・、おっ母~、嘉人・・、出て行くよ・・)
そう天井に向かい告げると部屋を出て道に出た。
 振り返る五階建ての鉛筆マンションは親父が残した唯一の財産,
しかもそれも亡くなる前から引き渡しが決まっていた代物、
此処は名古屋駅の西側の駅前を少し入って場所だが、あのJRが計画してる
リニア新幹線の駅周辺の広場の大工事に引っ掛かっていた。
四年間話し合い漸く立ち退きが決まった矢先の事、一階では魚屋の店を商う
親達、其処は十五年前マンションにして一階で細々と魚屋をして来たのだ。
 この地で生まれ、今日まで来た、澄人はもう三十二才、
弟は大恋愛で結婚が決まっていたが、自分は未だ其処は無い、
身軽と言えばそうだが、今となれば少し寂しさが勝り、
事故以後の生活は惨い物だった。
 そんな事を思い浮かべながら、澄人はその場所から歩き去る。
 引越し先は名古屋市西区の名古屋城が望めるマンションの七階、
其処に生活拠点を置いた。
築五年だが、最高な場所だし、其処は澄人が働いていた会社の得意先の方の
持ち物で買ったのだ。
 部屋に入るけど荷物は未だ総て整理してはいない、リビングで横たえると
動く気がしてこないし湧かない、何とか此処までは来たが、
此れからの事は未だ考える気も気力も無いまま、其れが事実、
本当に一人にさせられてからの日々は思い出せない程荒れ果てていた。
無謀や自棄になっていた一年間、会社も既に辞めているし、今後の事は未だ
考えても居ない、今迄住んでいた場所を立ち退く事も何とか出来たが、
今はその後の事は考えない様に逃げているのだ。
 澄人は地元の大学を出てから、一年間仕事もしないで遊んでいたが、
親父が後を継がないと知ると、独りで生きて行けと突き放されていた、
それも意気を感じずに、仕方なしで働くが、その後二年間仕事もしていない、
そんな間に家族の交通事故、そうして一年後立ち退きで住処が変わり、
今はその部屋で横たえて居る。
 「う・・」スマホが鳴る、出ると・・「ああ~美咲ちゃん・・」
電話の相手はあの弟の婚約者の女性。
「引っ越し出来たの・・」「え・・、ああ今日なんとかね」
「え、そうかじゃ片付けは・・」「何とかするが・・」
「え、じゃ未だ片づけて無いの・・」「少し残っている」
「やはりね、じゃ今すぐ向かう」「ええ。今何処ね・・」「名古屋駅よ」
「ええ~・・」慌てる澄人、だが美咲ちゃんは行動派、既に名古屋に来て
いると知る。
電話を切り部屋を見渡すが、なんと箱を積み上げるしか出来ない、
今は其処までの気力しか無かった。
 十五分後、一階の電話から報せが来て、施錠を開放する。
 「今日は・・」「ああ、久し振りよね」
「そうかな、一月前名古屋で会ったでしょう」「そうなるんか・・」
そんな会話で部屋に招く。
「なんと、少し片付いているじゃないね」「此処までだ・・」
コ-ヒ-を沸かしながら会話する。
『あのね、明日、名古屋で会議が有るから早めに来た』「え・・」
「だって、気に為るじゃないね、ママも行けと・・」「・・」
「それで、急いで来た」「・・」
返事の代わりコ-ヒ-を差し出す澄人、戸惑っていた。
 弟は、東京で仕事をしていた、其処で取引先の女性が美咲ちゃん、
何度も会う内に仲が良くなったと聞いて居るが、初対面は事故の一月前、
澄人が東京に出て、弟が引き合わせられた相手、それ以後は事故の為に
二度会うが、それ以外は無い、其れで今は部屋に来ているのだ。
弟が何時も苦笑いするほど行動的と聞かされてきたが、
今思うと当たっていると思えた。
 部屋では色んな話をされるが、澄人は気が笹路、まるで話の中身が
入っては来ない・・。
「ね~聞いて居るの・・」「え、何か、あ・そうか片付けか、良いよ」
「ええ、其れって前に話しじゃないのよ、今の話について聞いたのよ」
「今、なんだっけ・・」「呆れた・・」睨まれた。
 もう一度話をされるが、今度は聞き耳を立てる。
「え、其処か、そうだな、未だ何をするか考えられないから・・」
「嫌だ、もう事故は起きてしまったんだ、その後の整理も何とか出来た
でしょう」「そう言えばそうだけどな、気がね・・」
「あらら、意気地なしか、嘉人さんはそうじゃ無いけどな、お兄さんは
そうなの・・」「ああ、流れ易いかな・・」「呆れた・・」
でも嫌じゃ無い、相手が気を使われるのか、話も間が有るし、
澄人の返事を待ってくれている。
『じゃ、考えようかな、でも直ぐにとは・・』
「ま~、じゃ此れからの事は・・」「未だだ。何とかなるさ・・」
「そうだけど、仕事は見つけないと・・」
「其処なんだ、見つけると思ってもな身体が動かんし・・」
「ま~益々ほっとけない」「ええ、良いぞ構うな僕は何とかする」
「其の何とかが未だなんでしょうが・・」「言えるわ~・・」
笑うが流石に其処は笑ってくれなかった。
 部屋に二人きりは不味いと思い、食事にと出掛ける。
相手はしゃぶしゃぶと望まれそんな店にと澄人は向かう。
正面に座られる姿は眩い、年は未だ二十二歳、母親もまだ四十に為った
ばかりと聞いて居る。
 弟とのなり染は聞いてはいるが、どう考えても弟よりこの女性が先導
されて居たと思える。
其れほど大胆だし強引さも垣間見れた。
夕食は和やか、其れも相手の魅力化と思える、澄人はこんな場所での
会話は苦手そのものだった。

           つづく・・・・。































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