望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・2》

 五月半ばの爽やかな夜、ほろ酔いのまま店を出て桜通りを歩いて居る。
「何処か飲みに行こうか・・」「ううん、お部屋で良い、なんかおつまみ
だけ買おうよ」「そうか・・」従う澄人。
 三十分後買い物を終えて部屋に戻る。
「・・」会話が弾けない澄人、反対に相手は其処を気にされるのか話が
次から次と出て来た。
「え、じゃ未だ仕事はしないの・・」「うん、今はな、何が良いのかどう
するのか今は本当に検討が付かないよ」「じゃ、如何するのよ・・」
「其処なんだ、悩んでいる」「え、じゃ此の侭じゃ拙いわよ」
「そうなるよな・・」「呆れた、ママが其処を心配しているのよ」
「御免な、帰ると何とかすると言って・・」「ええ・・」
益々呆れ顔をされる、酒がそうするのか今は本当に言いたい放題、
まるで年が離れた妹みたいだった。
 「じゃさ、いっそ一度名古屋を離れたら如何・・」「離れる・・」
「そうよ、旅でも良いけど、仕事を違う所で如何・・」「ええ・・」
思いもしない事を言われた。
「じゃ、名古屋を出るんか・・」「そうでもしないと、澄人さんの旅立つ
場所が見えないわよ、彷徨うのも良いけど、今はそうじゃ無いでしょう、
なんとなく生きているし、其のままじゃ先が見えない、だから一度名古屋
を離れると何か見えるかも、見つかるかも・・」
「なんと、そう考えるんか・・」
「そうなると、名古屋に居ると未だに家族が、其処を離れると何か見える
かもしれないじゃない、見えないなら諦め其処から再出発も有り得るよ」
「・・」返事が出来ないほど相手を見詰めて動けない。
「あのね、基点、起点、気転と同じ言葉でも色々と在るじゃないね」
「え、あそうだね」「だから、此処を離れなさいよ、美咲も考えるし・・」
「え、考える・・」「そうよ、お兄さん一人じゃ危なっかしいじゃないね」
「え・・」「だから、此処は一度美咲の思う通りにして飛び出しなさいな」
「・・」いよいよ、返事に詰まり出す、考えても居ない事だった。
 「そうか・・、離れるのか・・」
「そうでもしないと柵が離れてくれないわよ、飛び出して弾けなさいよ」
「弾ける・・」「そう人が呆れる程弾けると違うお兄さんが見つかるかも」
「ええ・・」何とも言いようが無い程、相手を呆れる、
いいや凄いとさえ思え出す。
「美咲ちゃんは強いね、僕は男でも柔だな・・」
「仕方が無いよ、今はね、でも其れだけ抜け出せないのだし、其処は凄く
認める。でもね世間は皆見逃すよ、だって其処でうろうろするなど
見たくも無いし考えて居ない、其れほど厄介なゾ-ンでしょう」「成程な」
「ねね、じゃ旅に出て見なさいよ、何か有るかも無いかも、
でも見ていない日本が有るじゃない、名所や好物、其れに出会いも・・」
「出会い・・」「そうよ、物珍しそうな顔をしていると其処に突き当たる」
「ええ・・」「だってそうじゃ無い、犬も歩けば棒に当たるって・・」
「あはっ、そうだね、動かないと何も始まらないよな・・」
「早々其処よ、お兄さん其処」「はいはい、ご伝授感謝致します」
「ま・・」笑われる。
 本当に時間が経過する中で色々な話を聞かされる、
会話の中で何度も其処と言う単語を使い話を繋がれていた事が残る。
でも何でか嫌じゃ無い、自分の身さえ今は覚束ない身、そんな中で話を
聞いて居ると、何とか今からの自分がどうなるかが朧気に見えだすから
不思議だった。
 思えば、この美咲ちゃんの家はあの熱海の温泉地で美容院経営、
今じゃそうは呼ばないが、其処では芸者さんから婚礼の髪結着付けなど
手掛けて居られる。
店は既に熱海と白浜と下田にと手を広げられ、四軒の店を経営される
家だった。
 そんな話を酒を飲みながら部屋では続いて行く、いつの間にか二人は
酔い潰れて寝込むが、朝日が差し掛かると美咲は起きて、
部屋の荷物を整理し始める。
既に朝食は簡単だが、用意出来ているし、澄人はまだ寝ていた。
其の横たえる体を見ながら苦笑いする美咲、今は愛していた相手はこの
世には存在して居ないが、其の弟を懐かしむ兄がいた。
ママの薦めで顔でも見て来てと頼まれ、背中を押されて来たが、
今は来て良かったとさえ思えた。
あの嘉人さんと真反対の性格だと思えるし、其処のゾ-ンで居る男も
嫌じゃ無い、其処は危険の二文字が存在しないからだった。
 昼過ぎに何とか箱の中の荷物を片付けると、美咲は、
澄人を起こさずに部屋を出る。
マンションを出ると、直ぐに電話、無論相手はママ、
長い時間話をすると、歩いて通りに出てタクシ-に乗り込む。
 部屋で寝てしまった、澄人、起きたのが午後二時過ぎ、
慌てて部屋を見渡すが、相手が居ないの気付いた。
「・・」帰られたのか買い物かと思えるが、荷物も何もかもが整理され
片付いているのを見ると、既に部屋から出て帰られたと知る。
(うへ~凄い女性、あいつは生きて居れば最高な人生がおくれていたな、
可愛そうに・・)そうしみじみと感じる。
 コーヒ-を温めて飲み始めると何か昨日までの自分と違う面があると
知らされる、其れほど美咲ちゃんの御陰かと思えた。
「そうか、動くんだな・・」独り言を言いながら支度して外に飛び出た。
名古屋の駅に向かい其処で何もかも揃うほど店が有る、デパ-トもある、
其処で数冊の本を買い求め、夕食のグザイを地下で買うと、
二時間後、早くも部屋で買ってきた本を広げる。
本は日本の風景と名産、其れと心理学の本、其々を見たいと買い求め、
、陽が未ださすリビングで読み耽る。
 気が付くと、既に外は暗い、夕食はグザイを買っている、
ハンバ-グを温め野菜に乗せて,食事開始、本当に昨日までの澄人とは
思えない程変化している。
 夕食を終えると、又もソファ-で寝転んで本を見る、
外の景色には薄青色の照明に浮き出る名古屋城、部屋の中は未だに夕方の
姿そのままで本を見ている澄人がいた。
「・・」何か閃いたのか、起き上がると電話を懸ける。
「あ、美咲ちゃん、帰ったんだ・・、御免よ、酔い潰れてしもうた・・、
うんそうか家に帰れたんだ、今回は有難うね、本当に考えさせられたがね、
御陰で何とか動けそうだ、・・、うんそうなるかも未だ決めかねているが
動く事はするね、有難う、・・、うん決めると知らせるね、じゃお母さん
に宜しく・・」そんな中身を話していた。

          つづく・・・・。





















ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント