望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・4》

 山下夏美、三十歳、大学では二つ下、友と同じ愛好会のメンバ-だった。
背丈は155センチ、スレンダ-美人で名が知れ渡る逸材、
大学でもちやほやされていた女性、しかも何もかもが素敵、
其れが友の彼女だった。
「ねね、まだ時間有るの・・」「うん、良いけど何処に行く・・」
「ね、家に来てくれない」「ええ、何処や・・」「御器所・・」
「其処に有るんか・・」「来てくれる、中身が凄い話をしたいからお願い」
「・・」その凄いの単語に引っ掛かった。
 時間は有るし、その凄い話の中身が何か気に為る。
「良いよ・・」「嬉しい、悪いね、じゃ行こう・・」
何と素早い事、店を出ると卓志‐に乗り込むと御器所にと向かう。
「家に居るんだね・・」「未だそうなるね」「・・」
未だそうなるとは聞き捨て為らない言葉だけど其処は深堀はしなかった。
「誰かいるの」「うん」返事をされるが、なんか空気が重くなり始める。
 十五分で到着、御器所でも降りた場所は高級住宅地、坂の途中から家が
並んで坂上には有名な桜の花が綺麗な公園が有った。
「はいって・・」言われるままに階段を上がり玄関にと向かう。
 「帰った・・」「まあま~これはよう来てくれたね」「・・」
え、と思い真美ちゃんを見た。
「電話してたんだ、御免ね」廊下横の居間にと澄人は入る。
既に用意されているコ-ヒ-が出て来た。
 「何か話が有るんだよな・・」「うん、今しないと駄目」
「良いけど、辛い話なんか・・」「澄人君、其処は・・」
「良いじゃないか、話は早い方が良いよ、何金か仕事か・・」
「両方に為るかな、見ての通り一つ欠けた・・」「欠けた・・」
「うん、お父ちゃんが逃げた」「・・、ええ~今何と逃げた・・」
「うん、一週間前・・」何ととんでもない場所に来てしまった。
 会社の金を持ち逃げしていると聞かされ、今はもうどうにもならないと
泣き顔で言われる。
「幾らなん・・」「それが既にほとんど工面で来たんだけどもう力尽きた」
「だから幾らなんかね」「あと四十万円、既に四百万は払った」
「えでは四百四十万円か・・」「うん・・」小さい声で返事された。
「どんな会社・・」「証券会社・・」「ええ、何処・・」「桜通り・・」
「その何処や・・」名前を聞いて驚いた、なんと今日向かった会社の名が
出たのだ。
「その金は・・」「取引先に払う金・・」「何時・・」「一週間前・・」
「で、支払いは何で出来ただが、預金かね」「うん、私のと母の分です」
「・・」「声が出なくなるほど、世の中偶然が合うとこうなる。会うべき
して神様が合わされたのか、あの桜通りを歩いて居ないと出会いは無い筈、
其処を考えていた。
「じゃこんな時何でアソコを歩いて居たの・・」「・・」
「何か言わないと判らんが・・」「澄人君助けて・・」
「だから何で歩いて居た、まさかサラ金か・・」「・・」
「そうか、苦労したなお母さん、ええ~・・」
まともに初めて見ると驚くほど若い、そんな事有り得るのかと目を疑うが、
二度見すると確かに真美と添う年が離れてはいなかった。
 其処はさて置き、話に母に向けた。
「お母さん、期限は何時ですか・・」
「明日と思いますけど、本人が居ないし、其れで真美と話し合って・・」
「返済は出来るんですよねサラ金・・」
「・・、ええ、何とか一月でと頑張ろうと・・」「出来ます」
「何とかね~真美・・」「頑張るしかない、家も未だロ-ンが残っている、
叩き売っても差額をこっちが払わないと駄目と聞いてる、一月頑張ろうと」
「・・」そう言われる。
「真美ちゃん、其れを僕に出してくれと・・」
「出来れば知り合いが良いと思い・・」「・・」
「真美、無理ならいいけ、御免なさいね、藁に出も縋りたい今なの・・」
「判りますけど、真美ちゃん・・」「うん、何」「今仕事何している」
「事務、PCで」「そうか、お母さんは失礼ですけどおいくつに為られます」
「・・、三十五歳、後妻、しかもお金が絡んでいるから何も言えない立場」
又また驚かされた、本当に事実と知る。
「真美ちゃん、泣くな、四十万では済まないだろうが・・」
「え、四十万だけよ」「じゃ、家の必要な金は・・」
「其処は何とかしたいけど、借りるしか今は無い、全部叩いたし・・」
「そうか、もう何も言わないわ、良いよ出す・・」「え、貴方・・」
「お母さんにも娘の気持ち汲んで下さいね、この子はこう見えて根は真面目、
あれだけちやほやされても見向きもしていない、見ているから言えるんです、
二人で頑張れますか・・」「貴方・・」「澄人君、二人じゃ無理や・・」
「ええ・・」「だって鎹が無く無理、澄人君がいてくれるなら頑張れる」
「ええ、何で・・」「だって、誰がこんな事聞いてくれるの、道で出会って
感じた、澄人君だけが頼りや・・」「・・」
「貴方、何でもしますから、今回だけは如何か助けて下さい、お金は必ず
返します、信じてと言えませんが、必ず・・」頭を下げられた。
 「お母さん、何かまだ信じられん部分が有るんですけど」「何か・・」
「お金の工面其れだけでしょうか真美ちゃんも考えて・・」
「え、其れだけだけど・・」「じゃ、もし仮にお父さんがサラ金から借り
捲られているとなると如何します」「ええ~、まさか・・」
「そのまさかが今大変な事に為っているんですよ、言いたくは無いけど、
本人がサラ金で借りているとなると如何します、此処に来ます、大手なら
柔らかいですが、町金なら煩いですよ」「そうなりますの、真美・・」
「其処も考えたが、有り得るかもお父ちゃんやけくそになっている・・」
そう泣き声で言う。
「其処は知らん顔で過ごしましょう、弁護士に先に話しておきましょう」
「ええ、貴方・・」「澄人君、助けて・・」真美が泣き顔で訴えた。
 桜通りで出会った二人、其処は定めの道かと思えるほど偶然、
しかも会うなりこんな話を聞かされている。
「では、此れからの事は弁護士に任せます、其処は断じて譲れませんけど
良いですよね」「お願い、助けて・・」
「いいから、もう泣くのは駄目、可愛い顔が台無しじゃろうがね」
「澄人君・・」泣き顔に手を当てて涙を拭いてやる、
其れを見て義母も泣き崩れられた。
とんでもない事に嵌り込んだ澄人だった。
 「いいから、もうこの事は解決にしよう、さ、もう二人とも泣かない
で下さい」「澄人さん有り難う、何でもするねね、助けてよね」
「判ったと言ったがね、もう泣くなよ、困るが・・」
流石に澄人はやり切れない思い、二人を見比べると、本当に窶れても
美人は美人、変わらないと見た。
 「明日で良いか・・」「ええ、お願いします」
「良いです、アソコで出会ったのも何かの縁でしょう、な真美ちゃん」
「澄人さん」「阿呆、澄人君で良いじゃないか」頭を撫でてそう言う。

             つづく・・・・。























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