望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・18》

 浴場から戻る親子、其処は以前と変わられていた。
舞ちゃんが事のほか喜んでいるから母親もつられたのか笑顔で戻られる。
既に夕食が整って、料理を見る親子は又も喜ばれ、三人で夕食開始、
ビ‐ルをお互いが飲んで話も次第に出だす。
 舞ちゃんが食事を済ませると、澄人の膝に凭れ掛り居眠りを始めた。
「ま~この子、済みません・・」「良いですよ、可愛いし・・」「・・」
其れには何も言われず、ビ‐ルを飲まれる。
 暫くすると、澄人が聞いても居ないのに相手から話が出始めた。
 聞くと、名前は清水美佳二十七才、大阪で暮らしていたと言われ、
仕事は美容師で高校を出た後働いて来たと言われる。
御存知でしょうと、言いながら自分たち親子は逃げて来たと、
そう本人から言われた。その中身は言おうとされたが、
澄人は其処で話を断ち切る。
「良いじゃないですか、過去は過去、でもよくふん切れましたね」
「其処は何とか、気の良いおじさんが大阪で知合い、その人の薦めで逃げ
ようとそそのかれて、荷物を抱えて金沢まで・・」「何で金沢・・」
「なんか、おじさんの知り合いがいると・・」「なんと、其れで・・」
「昨夜は何とか娘と一緒で難を逃れたんですけど朝早く、私たちの落着く
先に行ってくると言われた」「・・」
「それで、可笑しいいと直ぐにホテルを出てしまった・・」
「じゃ、アソコは・・」「一度海を見て、後の事は考えようと・・」
「そうでしたか、じゃ僕の思いが多少当たっていましたね」
「済みません・・」「良いですよ、でもこれから如何します・・」
「働く場所を探し、美容師なら何とか出来る、子供が居るから其処が」
「じゃ、部屋を宛がわれたら働けますね」「そうなります・・」
そんな話まで出来だした。
『でもよく逃げ出せましたね』「昨夜の話の中で可笑しな事を言われ・・」
「え・・」「温泉宿でもとりあえず働こうかと・・」「えっ・・」
「それでどこらかと聞いたら芦原だと」「なんとでは既に向かう先は・・」
「決めていたみたいです、何度も電話をされていたし・・」そう聞いた。
 「じゃ、いっそ少し旅をして、考えましょうか・・」
「ええ、貴方、お仕事は・・」「今は無職、危ないですかね」
「危ないなんてものじゃ無いわ、無職ですの・・」
「ええ、未だ家族を失って一年、もう大変だし気が抜けています」
「ま・・」「でも、今回の旅で戻ると、我武者羅に働きます」
「・・」頷いてはくれなかった。
 だが、今度は澄人が自分の事を話し始めると、身を乗出し聞いてくれる。
「あら、じゃ旅も既に此処まで数日過ぎているのね」「はい」そう答えた。
 しかし、澄人の話し方は普通じゃない、相手が美容師だと聞いてから、
何とかしてあげたいと心から思い出した。
「え、では、今迄の旅は其処だけですの・・」「これ見て下さい・・」
スマホの画面を見せる。
「・・、ま~、じゃ旅は本当でしたのね、牛迄居ますね」
「ええ、良い人達でした・・」そこで二人はビ‐ルを飲む。
「ふ~、そうか、もう驚いて怖かった・・」「ええ、僕がですか・・」
「ええ、今は男は無理・・」「でしょうね、じゃ僕、、無害ですよ」
「自分で言います其処・・」少し笑われる。
浴衣がはだけるから、見て仕舞うほど艶やかな女性、
(これじゃ男はほっとけないな・・)澄人もそう思えた。
 「でも悪いわ、散財させた・・」
「構わないですよ、どうせ一人身、夜は外を徘徊かな」「え、怖い・・」
「安全ですよ、舞ちゃんがいます」「・・」何も言われなかった。
 「ねね、もう一度違う場面を見て下さい・・」「えっ・・」
スマホを出してメ-ル画面を出す。
「相手は伊豆や熱海で四店舗、しかも美容院・・」「ま~本当に・・」
「このメ-ルは娘さん、僕の弟の婚約者、此れは母親、やり手ですよ、
株もされているし、この間僕もやれと進められ、株を買いました・・」
「ま~・・」「ですから、旅してて、良ければ其処に如何ですか・・、
店は直ぐ出せるけど、一度落ち着いて今後を考えてみませんか・・」
「え、貴方・・」「僕が薦めるより、現地を見ませんか、僕も知らない」
「ええ・・」「だって、弟と関係がある家ですよ、知らない」
「・・」呆れた顔で見られた。
 「だから見学してからと思い言い出せなかった、でもね、相手は最高な
人達です、其処は保証します」「ええ、保証、頼り無いわね」
「済みません・・」「いやだ~・・」苦笑いされビ‐ルを飲まれる。
「此れから数日、行動を共にしません,行付く先は伊豆と考えて如何です」
「では・・」「見て気に入れば其処で腰を落ち着け考えるってどう・・」
「貴方ね、先様には未だご存じないでしょうに・・」
「ですから、此れから・・」「決まってないのに向かうの・・」
「そうなります」「計画性が無いわね」
「ええ、でも逃げたのとは違いますからね」「ええ、其処言います・・」
「あ・・」「うふっ、当たりだしね、そうか、美容院ね・・」
そう呟きながらビ‐ルを飲まれ、慌ててビ‐ルの追加を頼んだ。
 気を許されたのか、以前とはまるで違われる、一番は話しが止まない、
いろんなことを聞かれ出す、女性はどうかとか、今から何をしたいのか
とか家庭は何時もたれるのかとか・・。
「もう、少し間を開けてくれませんか、返事が・・」
「え、あ、そうね、御免」又ビ‐ルを飲まれ、澄人も従い飲んで行った。
午前一時過ぎ、漸く二人は倒込んでしまった、布団には脚だけが入る姿、
相手も舞の傍に辿り着けずに手前で横たわれた。
 朝、舞ちゃんに甲高い声で起こされるまで二人は寝ていた計算になる。

         つづく・・・・。