望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・53》

 本当に澄人は意気消沈、調査書に書かれている事は総て本当、
だが中身は上っ面であるから其処の部分は胸を撫で下ろす。
けど、懸る関係者は総て調査書に乗っていた。
「此れね、悪いと思ったけど、知りたかったの、でも知ってても変わりが
無いわ、尚美もお父さん達も驚かれたけど、最後はあの人なら有得るかな、
でも凄いぞ遠藤さんはと、言われた」「・・」
「だから、此れから遠慮は無いの、貴方を知ってて会うのよ」「え・・」
「ねえ、今後も同じ動きなんでしょう」
「そうなるのかな、でも知られたし・・」
「だから良いじゃないね、動き易いでしょうが・・」「でも・・」
「何よ、澄人さんらしくないが、飛騨も伊豆もそうなると判る気がすると
お父さんが・・」「・・」そこも返事出来ない、澄人は頭を落としていた。
「さ、飲もうか・・」そう言われると従う。
 其処に尚美さんの携帯が鳴った。
「ええ、お父さん、嘘何処に居るのよ・・、ま~じゃ向かっているの・・、
嫌だ~信じられん・・。もう気が早いから、知らない馬鹿・・」「・・」
電話の中身が判らない、最後に馬鹿と言われて驚いた。
「もう、お父さんったら、娘の気持ち位判る筈じゃないね、嫌いよ・・」
「え、如何したん・・」「もう酷くない、こっちの事も考えずに・・」
「だから何か・・」「こっちに来ているのよ」「来ている、何処に・・」
「此処・・」「・・、うげ~何で何でよ・・」
「だから驚いているのよ、もう馬鹿じゃない・・」
呆れる尚美もそうだが、聞いた澄人は驚愕した。
なんと、尚美さんの父親がもうこっちに向かっていると聞くと、
心臓が止まりそうなショックを受ける。
「で、何時頃・・」「今、御器所だそうよ、もう直ぐ来そう」「・・」
呆れ果てて、声が出なかった。
「待て、じゃ何か食事は、未だ七時前だぞ・・」「知らない・・」
「おいおい、そうは行かんが、如何し様・・」
「知らないからね、もう酷い親」泣きそうな顔をされるが、来ると知ると、
慌てて居られた。(何で、今来られるのか・・)
理解に苦しむが、既に向かわれていると判ると、澄人も落ち着けなかった。
 電撃とは此れかと澄人は半ば諦めて居る、既に尚美さんのお父さんの
行動力は知っている身、伊豆も然り、今回も・・。
 午後八時前、遂に相手が到着、部屋に招き入れる澄人、又も唖然・・、
既に尚美さんのお父さん一人じゃない、義雄さんも一緒だった。
「尚美ちゃん御免な・・」「馬鹿、おじさん最低・・」
「御免、怒るな、あんたのお母さんもご承知なんじゃがね」
「ええ、呆れた親ね・・」憤懣遣る方無い尚美、だが、部屋に入ると、
そうは言ってられない、食事はと聞くと未だと言われ、
澄人が急いで寿司屋に電話、慌てる姿は、事を表していた。
「御免、もう気が焦ってな、早く会いたいと・・」「おじさん・・」
「御免御免・・」平謝られてリビングで座られる。
 「実はな・・」そこから話をされ出す中、澄人は驚いている。
昨日、既に飛騨の谷を見て来たと言われると、腰を抜かして呆れ果てる。
「それでな、遠藤さんが気に入られた場所を備に見て回った、無論写メも
撮ってな・・」話が続くが、未だ衝撃から戻れない澄人。
「それでな、あの谷は凄いぞ、あんたが言った中心の山にも上がった、
其の写メも有る、でな、あそこはあのままでいいが、なんといっても深い
雪が積もる土地、冬季を過ごすための設備も必要、其れで義雄が思出し
たんだ、俺達の大学の仲間が居たと・・」「仲間ですか・・」
「ああ、遊び仲間だな、其れが、この間同窓会で聞いて居たが忘れていた、
なんとあいつは一級建築士、そいつが石見の三瓶山の麓で同じような事を
委託されているんだ・・」「何と、では・・」
「ああ、其れで昼過ぎ電話すると、今も石見に居ると聞いた、で飛騨も
似たような土地じゃろう、夏も冬もな・・」「ですね・・」
「だから、今度の話を其処でも出来んかと・・」「ええ・・、じゃ・・」
「ああ、そうだ、あいつは喜んで是非と、今迄苦労したノウハウを発揮
できると喜んでくれたんだ」「・・」
「直に合いに行くと言ってしまったんだ」「ええ・・」
「な、急ぎアンタに話しをと・・」「なんとそうでしたか、でも・・」
「なな、其処は既に動いて、参考にはなる、強みは其れを作上げている奴
が友だ、飛騨も如何かとな・・」そう言われた。
「では見学に・・」「そう、あんたを連れて行こうと・・」「ええ・・」
「なな、善は急げじゃ、出来るところから始めるのが良いぞ、牛は待って
くれん、育成を速めるだけ、事が進むぞ、なな動いてくれんかね・・」
「え、僕ですか・・」「そうなろうがね、言い出しはあんただろうが」
「ええ~~」呆れるが、相手の顔は真剣そのものだった。
 聞いて居た尚美も怒りは何処えやら、父親の顔は何時もの顔じゃ無いし、
話は悪い事じゃない、其れが進めば何時でも澄人さんに会えると思込んで
しまう。「なな、尚美もな・・」「お父さん唐突よ・・」
「だから謝っているが、此れは急いだほうが良いぞ・・」
「で、谷の人に会えたの・・」「いや、其処は義雄が止めた、先走りは
不味いとな・・」「偉いわおじさんにしては珍しいじゃないね」
「おいおい・・」頭を掻きながら笑われた。
「じゃ先方には・・」「ああ、連絡すると」決まっていたと澄人は思えた。
 遅い食事をおじさん達に食べさせ、澄人は未だに話を聞かされている。
 「ええ、では・・」「ああ、アソコは総て捨てる物は生じないと、小便
だけはろ過して捨てるだけと聞いた」「何と出来るんですか・・」
「あ、アソコはしていると、飛騨も金は懸るがしようと決めているんだ」
「なんと・・」本当に動き始めていると其処で知らされた。
「ではお供いたします」「あのな、主役は何処でもあんただ、お供なんて
こっちが言うセリフ・・」笑われる。
「お父さん・・」「聞いたか・・」「うん、良いわ、其れじゃ許すか」
「ええ、お前・・」今度は同じ笑いでも苦笑いだった。
そうして、朝早く発とうと決まる、ホテルにと言われたが、
此処で寝て朝行くと決まった。
「でな、伊豆も連絡して置いたぞ・・」「ええ・・」
そこだけは驚いてしまう。
「直は無理だけど、此方も向かいたいと言われた・・」そう聞いてしまう。
本当に手回しが良過ぎる相手、でも其処は澄人は多少含みが有ると睨んだ。
「お一人で向かわれるのかな・・」「・・」返事が戻って来ない。
「なな、此れは本腰で懸りたい、遠藤さん宜しく・・」
「義雄おじさん・・」「今迄飲んべんだらりと過ごして来たんだ、此れで
良いと思い込んでいた、だが如何してあんたを知ると間もないが如何よ、
この変わりよう、我ながら驚いているんだ、こんな意欲が湧く等考えても
居なかったぞ」「おじさん・・」
「わしらの夢にあんたが付合ってくれ、未だ先は有ると見込んで頑張る」
「おじさん・・」迫力に負けそうな澄人、傍で頷かれる尚美の父親、
本当に行動力が有り過ぎだと言いたかった。
 呆れたのか、尚美さんが酒を出され、寿司を食べ終えると、
さ寝てよ・・と急かされ、ゲスト部屋にと追いやられる。
「ね、御免ね・・」「ううん、こっちはそうじゃ無いけど、尚美さん・・」
「うふっ、邪魔が入っちゃった・・」笑われた。
二人は、当然澄人の寝室のみが開いてるから、其処に消えるが、
その夜は何も動きが無い、有る筈もない、父親が隣の部屋で寝ている。
尚美の思いは複雑だが、此処迄来れば後は流れで良いとさえ思えた。
親の本気度の御陰で、何時でも澄人さんに合えるんだと思うと、
其処は自然に身を任せても良いと考えだす。
 喧騒の部屋も、静かになり、朝方から始まる思いがけない事を澄人は
待って目を閉じた。

           つづく・・・・。