望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・54》

 九月二十九日、朝早く、名古屋を出る、車は敬之さんのセルシオ、
長距離には適して居る事からだった。
車内では色々な話が出てくる中、車は一路島根県の三瓶山を目指す。
名古屋からは名神高速を走り、大阪と神戸の境では中国道に入り、
其処から山崎ジャンクションから中国横断道で日本海に向けて走る。
無論その道路の横手には、もう一つの名高い大山が見える、
其処でも酪農と牛も有名だし、今は競走馬を育成する大手の会社も
出来ていると聞いた。
長時間だけど、皆元気,澄人もつられて笑顔が見えた。
名古屋から大阪まで二時間半、其処から池田ジャンクションまでは
混んでいたが、池田のトンネルを過ぎると、快適なドライブ、
いつの間にか運転は澄人がしていたのだ。
 朝七時半に名古屋を出て、早くも昼過ぎ漸く大山が見える所まで来てる。
一度昼食を取る、サ‐ビスエリアで休憩、其処で飲んだ牛乳の美味しい事、
義雄さんが一番喜ばれる。
 午後二時過ぎ、何とか日本海が見えだす、其処から国道九号線の道を西に
と走る、やがて見えて来る中湖と宍道湖、走り続けるから、流石に疲れる、
其処で敬之さんが、電話され、向かい先は明日にと言われた。
 そう、ここ等で一泊と決められていた、直ぐに玉造温泉だと義雄さんが
叫ばれると、車は宍道湖を後ろにし、玉造にと向かう。
和風の旅館が取れて、澄人も疲れを癒そうと風呂に向かう、
時間は既に午後四時過ぎ、風呂から上がると電話が来る。
 相手は伊豆の玲華さん、そちらに向かおうかと聞かれたから、
大変だから無理はしないでと諫める。
「じゃ、飛騨に向かう・・」「ええ~~」
「何でよ、良いじゃないね、あんたね、もう玲華は身が軽くなっているの、
行くからね」「ええ、独りでですか・・」
「内緒、其処は如何でも良いじゃないね、独りじゃ運転疲れるしね・・」
「・・」呆れて話を聞かされるだけだった。
 その夜は流石に疲れた三人、酒を飲んだ後すぐに横になる。
 九月三十日、午前十時、車は又国道九号線に出て今度は西にと車は走る
「結構遠いいな・・」「そうですよ、右手は日本海じゃ無いですか、対岸
はもう韓国ですからね」「ひや~そうなるよな、なんと日本は細長いわ」
義雄さんがそう言われるが其れも確かにそう、本島のど真中から来たから、
そう思えた。
松江から玉造、そうして九号線を走り、今やっと標識に地名が出だす。
「おう~何と兆しが見えだしたぞ、日本海も綺麗じゃ無いか・・」
車の窓から見える景色は凄い、澄人も運転しながら見惚れる程、
最高な景観だった。
 太田市に入り、其処の海際のレストランで昼食、本当に長旅、
でも三瓶山は直ぐそこと聞いて居るから元気は残っていた。
太田市から目的地には早く到着、無論見たい石見銀山も有るけど、
帰りにしようと敬之さんが言われる。
 午後二時半、ナビに従い、現地に到着、車を止めて辺りを見渡す、
左上に三瓶山、裾野が広がる中で来る途中、何度も牧草地帯を見ている。
其処に牛が居る事も確認していた。
「ここ等かな・・」澄人が運転しながら、車はゆっくりと進む。
あまり広くも無い道だが、走る車さえ見当たらない、
其れでユックリ進めた。
 「ああ、アソコじゃ無いか・・」義雄さんが言われる。
「おう、此処だぞなんと石見牛生産牧場・・、お、牛舎が並んで見えるが、
此処だ・・」漸く到着、道の空き地に車を止める。
「まあま~あんた達は名古屋からかね・・」
「え、あそうですが、おばさん此処の人ですか・・」
「そうなろうがのう、あんたは清水さんの知り合いと聞いて居るが・・」
「ハイ悪仲間です」「あはっ、いんさるのう、疲れんさっつろう、家に
来んさい・・」聞きなれない訛りだが、其処が結構良いと澄人は思えた。
 牛舎の傍だから牛臭い、其処は仕方が無いのだろうと匂いを吸込んだ。
「うひゃ~、本当にきんさったんかね・・」
「おう、辰巳、久し振りじゃがね・・」友との出会いは誰も一緒、
肩を抱き合いながら懐かしいと言われる。
部屋に入ると、直ぐに話が始まる。
 澄人が描いている予定図を出して話が進む、無論素人の計画図だが、
現場は間違っていないから、大人の頭が寄り、話を聞かれていた。
「成程、既に牛は飼われているんだね」「少ないがそうじゃ・・」
「じゃ、写メ見させてもろうたが、其処は良いと思うぞ、雪は此処と
同じくらいかな・・」「そうみたい・・」「で、牛はどれ位・・」
「ゆくゆくは三百から上と・・」
「何とものすごいじゃないかね、じゃ敬之と義雄が・・」
「ううん、この人が主・・」「え・・」若い澄人を見て呆れられる。
其処から敬之さんが話をされ出す。
 「何と、そうかね、じゃじゃ、あんたがのう・・、で名古屋で店を開いて
捌くのか・・」「そうなる、余れば売るしな・・」
「何と良いぞ、じゃ牧場が名古屋で店開いてか、良いな良いよ其れ、
じゃ此処は其処だけは違うが、全て似ているぞ・・」「似ている・・」
「ああ、なんとそうかね、此処もな、以前は細々と既に辞めようと思われて
いたところなんだ、其れがのう、有る人が此処に来られて、其れから豹変、
あれれと思う間もなく、此処はこんなに変化出来た、総てその人の御陰
なんじゃが・・」「何で似ているんか・・」
そこから話をされ出すと、知らない間にあの迎えてくれたおばさんが
座られて、話の中身に手を加えられる。
 「それがのうとんでもないい人でな・・、今は隠居だが、家の母親が話を
聞いて、なんと私らが、出向いて頼み込んでいたんだ」
「出向いてですか・・」「ああ、相手は豪儀なお方じゃった、金は有るし、
なんと男其の者よ、遣れんほど男・・」「ええ、意味が・・」
「あはっ、今じゃ伝説よ、八年前に起こった出来事が今じゃこうして此処も
凄い事に為った」「意味が・・」「待ちんさいや、話はゆっくりとな・・」
「あのう、ご飯・・」「ああ、そうじゃが、ご飯な、泊るにも此処じゃ、
拙かろう臭いし・・」「じゃね、じゃ電話してみようかね」「お願い・・」
なんか理解出来ないが、泊るのは此処じゃ無いと思えた。
 でも話は続く、此処は平成十七年から、ある男が乗り込んで様変わり
出来たとは聞かされる。
其れが、今計画して居る事と似ているとまで辰巳さんが言われ、
此処は三部構成に為っていると・・。
「えでは分担か・・」「そう、子牛を育成する部分と肥料作成、種牛の管理、
商品の発送及び解体・・」「何とじゃ此処で総てか、種牛は金が懸るぞ」
「其処が摩訶不思議、其の大元が乗り込まれたんだ、然も大阪からだぞ、
五人が揃われて、シンジケ-トを作られた、その資金で種牛を六頭抱えられ
たんだ、其れが今も引き継いで、今は二代目と三代目かのう・・」
「なんとでは総て此処で育成と販売まで・・」
「ああ、忙しいぞ、御陰で此処は今じゃ誰もが知る牧場、ロ-カルテレビで
ドキュメントが放送されもしたんだ・・」「なんと凄いぞ・・」
そんな話を聞いて居る、澄人も呆れる程驚かされた。
 周りを見学しながら、話は続いて行く・・。

            つづく・・・・。