望情小説110弾《獅子身中の獣‹二重人格›・・17》

 似た者同士と年も近い二人、亮太との事で一気に気が合う仲に為り得た。
其れから妙子は、今迄の経緯と、亮太が起こした会社の事も話に出て、
晴子は未だ大阪に出て間もない義息子が、こんなに凄い女性と知り合った事
に驚かされている。
 「え、では妙子さん、貴女・・」「ええ、今している仕事は娘に聞くと
先々にはとんでもない事に為りそうと聞いてから、胸が躍るほど興味が湧いて
来たんです。おかげで家は土地成金、でも家には娘二人しかいない・・、
然も先がどうなるかと危ぶまれて仕方が無い。其処に現れた青年が亮太さん
でした。此れからは他所の子だけど、何とか思いを成就させたいと思込んで、
此処にお邪魔しています」
「そうでしたか、泣けるほど嬉しいですけえ、あの子は獣を持つ身ですが、
普段は心根が優しい子なんです。でも田舎に置いとけば、やがて私も此処に
居れない事に為りそうで、企んで亮太を唆し、まだ使えると確信できた我身を
餌に勉強させ、最高学府に挑戦させたんです。無論唆す中で白状しますが、
なんとあの子アソコが強靭で、瞬く間に魅了され、成績が良くなるとあげると
また一段階上にと向かわせて来たんですよ。考えれない女の身は抱かれると
理性は忘れ、欲望の中に嵌り込んで行く自分を止めることは出来ません。
今貴方に合えて、其れが良かったと思うようにします。此処での事は既に晴子
は夢と思い、あの子が歩く先を楽しみにして、この家を守って行こうと決めて
いたんですけえね・・」「素晴らしい事です、あの子は何とか其の獣を上手く
手懐けて歩けるようにさせ、其れが妙子は考えれば武器に為り得るかと・・、
今は思う様になりました」「妙子さん、貴女本当に凄い方ね・・」
「いやいや、其れは倍にしてお返しします、晴子さんこそ、身を挺してあの子
のゆく道に向かわせておられる、凄い女性ですよ」
「其処は反対にまたお返し、妙子さんが凄い方だからあの子は甘えられる」
今後とも宜しくと、手を握り合っていた。
 話が止まない、止められなかった、40前後の二人は炬燵に入り、話をする
中で、益々亮太を育て上げようと二人は思いを決める。
「では・・、なんと恐ろしや、いい・・一億ですか・・」
「今は其れでと、まだ先にはあの事業は機械が高価で必要と娘が言うし・・、
其れなら中途半端じゃ駄目と腹を括って懸ろうと、其の決める前に聞いて居た
貴女に是非会いたいと来たんです」「妙子サ~ン・・」
感激した晴子が抱き付いて大泣きする。
 だが其処から思わぬ事を晴子が妙子に話をする。
「ですが此処で考えませんか、何から何まで与えたんでは、あいつは逆上せ
上がる、其れは良くないと思う、でも会社は大事だしと、悩んでいたんです
けえね、でも貴方に合えて、益々そこはそうじゃ無い方が先行きあの子には
良い事と思えるんです。如何かこれ以上は出さんで居て下さい・・、
一億はお願いするとしても、それ以後はあの子が動き集めることが出来るか
様子を見て・・」「ま、貴方凄い、本当の母やないね、親心は甘えかすだけ、
でも其処で踏ん張り先を見越すなど普通じゃ出来ないやね。猫かわいがりが
母親の普通の姿や、ほんまあんたは良い女性じゃね、良いわ、其処相談して
進めようかね」「お願いします、とどのつまりあいつがなんとも為らなく
なれば話は別ですけ、其処は妙子さん御願いします」
「任せて、来て良かった・・」同じ穴の貉じゃと二人は芯から笑えた。
 こうして亮太が知らない内に、晴子と妙子は戦場の友と固く誓い、
大阪に戻る妙子を見送る晴子の顔に大粒の涙が・・、
冬の太陽で光って落ちていた。
そんな事とは知らない亮太は何時も金策に駆け回った。
 だが、年が迫る十二月半ば過ぎ、見知らぬ人から携帯に電話が来た。
相手は女性の声、いくら考えても見覚えは無いが、相手は亮太の事を知って
居られた。
「貴方がしている仕事の事で会いましょうか・・」と、先方から言われる。
不思議な面持ちで会うと即答するが、何でかと訝る亮太、でも気は藁でも
掴みたい今の状態、何か手掛かりが在れば喰い付く、其れが今の姿だった。
 事の原因は、何とか年内にめどを付けたい事が生じている。
其れはPCで領域を買いたい事、其処は媒体として枠が在る、既に大手の会社
が二つ其処にスペ-スを買い、ゲ-ムや囲碁や将棋部類を其処で参加者を
募っている。
其れを知り調べると在った、媒体は確かな会社しか分けてくれない仕組みで、
本体と契約しないといけない事が判明、其処には保証金という名目で持主の
会社と契約することが判っていた。
其処の媒体に為るのが、今一番必要な事、亮太が必死で資金確保する姿は
其れなのだ。
既に妙子さんから資金を出して頂き、一億近くはもう無い、機械の搬入で
消えていた。
 仕事の事を聞きたいとほのめかされ、飛びついた亮太、言われる場所にと
夕方向かう、向かう途中で未だ知らぬ相手、不安も有るが会うことが先決、
切羽詰まっている亮太には合わない理由など無かった。
 外資系の最近出来た豪華なホテルのロビ-が待合場所指定,駆け込む様に
入ると、唖然騒然,知らないとはいえ、豪華賢覧、世間はバブル崩壊で、
企業は青息吐息な筈、だが此処の雰囲気は其れすら隠せる程豪華で華やかな
ホテル・・、「え・・」まず最初に目に飛び込んで来た事に息を呑む。
電話では相手の服装だけは聞かされている、薄い鶯色の洋装・・、とだけ。
其れでその色を見つけようと目が探す中に飛び込んで来たのだ。
 『・・、・・』無言で色に引寄せられながら歩いて・・、その相手の前で
お辞儀し、会社の名を告げて間違いでしょうかと尋ねた。
「・・、ま~、若いわね・・、そうや、私が電話した相手・・」
安堵するより驚く亮太、向かう相手が美しい女性で、しかも年はまだ40には
間があると見定めた。
手で、どうぞと座る事を薦められ、亮太は豪華なソファ-に腰を落とす。
 「在る方から、是非会いなさいと勧められているんよ、中身は言わんし、
何でかと訝るわよね」「え、では中身は・・」
「知らないし、相手を見て判断してとだけよ・・」「え・・」
次第に不安になり出す亮太・・。
「そうでしょう、其れで資金を出せと」「なんと、其れだけでしょうか・・」
「ええ、そうよ」「・・」絶句する、亮太は此れじゃ話も何も・・、
する最初から駄目と判断した。
「では、初対面では無理ですよね、僕はてっきり、中身も理解されていると
ばかり、そりゃ~そうですよね、中身もご存じないなら致し方ないでしょう、
お忙しい中済みません、言われた相手が何方か知りませんが中身を理解され
ていないなら無理と思います」「でしょう、だからメンツで会うだけならと
お答えいたしたの・・」「判りました、無理な事、そうでしたか・・」
溜息をつきながら、コ-ヒ-をのむ、之ほど苦い、コ-ヒ-は初めてだと
思いつつ飲んだ。
「お時間は有りますの・・」「え、既に夜ですから約束は有りませんけど」
「じゃ、食事でも如何です」「え、遠慮します、田舎出ですから不調法です」
「ま、謙遜かしら・・」「事実です」そう言うしかない、今は落胆と、
現実はそう甘くない事を知らされた時、そう返事するしかなかった。
 「待って・・」急に立ち上がられ、でかいガラスの先に照らし浮かぶ滝を
前にしてどこかに電話される姿、なんとこんな女性と話をしていたのかと、
目を疑うほど、其の立ち姿の見事な事、滝がライトで浮かぶ前で、
何かの映画のワンシ-ンを見ている錯覚を覚える。
其れ程様に為るし、見事な光景で圧巻だった。
電話をされながら、ちらっと振り返り亮太を見られた。
身震いを知る我が身、何とも言えないほど美しい女性と再度判断させられる。
「え・・」電話を終えられ、亮太が座る場所に戻られた・・。
「お願い、此れからのお時間、私に使わせて頂けないかしら・・」「え・・」
「お願い、電話したら連れて来いと言われているのよ・・」返事に困る、
こんな今の気持ちじゃ、いけそうもない我が身、暫く返事を返せなかった。
 だが、先様はそんな思いなど聞かれずに、先に席を立たれると亮太もまだ
返事していないが後を従いホテルのロビ-を出た。
玄関に待つタクシ-に乗り込まれ、亮太も仕方なく乗り込んでしまう。

           つづく・・・・。