望情小説110弾《獅子身中の獣‹二重人格›・・34》

 大学が夏休に入り、俄然会社内は活気が出て来た、
郷から出て来ている者も早目に戻り、既に業務に専念する。
亮太は松原に通う毎日、其処に義母が来ている、義妹の琴音の顔も見れた。
 八月に入ると、もう会社は若者だけで成り立っているし、
小百合さんも加わり、監督室の室長の立場で会社全般の様子を監査される。
 伸介は依然忙しい身の上、毎度東京や横浜に出向いている、時々碧が同伴
するが、亮太は苦笑いするだけ、其れだけ暗黙の了解を二人は持っている。
 亮太は熱い最中、芦屋と千里に顔を出していた。
其処は毎度の事、呆れられるが、そんな事お構いなしの姿、夏でも庭に出て、
草むしりや奥さんの相手をする。
この芦屋の家は先祖伝来の由緒ある豪商、戦時中までは淀川縁に夥しい工場
を持ち,材木、繊維、鉄鋼所が軒を連ねて在った。
 戦後は無残極まりない光景、淀川だけがハッキリと見える景色に為り果て
ている、囲んで並んで有った、工場、会社、荷役を積み下ろしした堤防が
無くなって寒しく見えていた、其れだけ空爆の被害はでかかった。
其処をほとんど持っていた芦屋の家、戦後は身動きせずに土地は野ざらし、
其処に何かが立ち始めたのが、戦後三年経過後、繊維の工場が建った。
だが、他の空き地は未だ使われていない、其れがあの万博が大阪で行われる
と決まると、その淀川傍は夥しいビル群に変化、無論ホテルも数か所完成し、
あれれと思う間もなく開発が興って行く。
其れに従い芦屋の家も忙しくなってきたと聞いて居る。
 千里は時を同じくし、大阪万博の敷地として決まるや、周り全体が小山と
草原・・、其れが開発されていった。
無論敷地を多く持つ千里の家、武藤家は瞬く間に大地主だから莫大な土地値
が入って来た、今に言う土地成金、だがその先祖から引き継ぐ土地代金は、
今度は場所を変え大阪市内でのビルに変わっている。
 そんな凄い家に通う亮太は新参者だけど、もう必要な男として両家に
認められていた。
「え、じゃ亮太やその話本当かね」「婆ちゃん、面接してくれんか・・」
「往々、良いけど真かねその話は・・」「そうや、色々と話おうて来た、
此方さんが良いと言われれば動けるよ」
「なんと凄いじゃないかね、お前は見所あると見ていたが、其処もそうなる
のかね、こいつめ・・」千里の家では婆と亮太がそんな話をしていた。
 九月十日、午後三時、千里の家に亮太と舞子の姿が見える。
紹介を終えると亮太はもうその家には居ない、舞子を残して婆と話ができる
体制をと目論んでの事だった。
その企みが功を奏し、瞬く間に舞子は千里の家にと入り込んでしまう、
其処には婆の力が加わり、まんまと紘一を垂らし込んでいる。
それは瞬く間に蔓延、数日後には舞子を連れ、芦屋の夫婦と神戸で食事会、
其処で紹介されていた。
友の健一も、早苗も手放しで喜んで瞬く間に仲間入りと為って行った。
漸く芦屋と千里にカップルが誕生と乾杯する中、舞子は出しゃばらず従う姿
に一層芦屋の夫婦は感動する。
瞬く間にが言い表しが最適、其れ程ツボにはまり込んで居る舞子・・、
健一が家に戻る時間が早いと、婆が大笑いする中で様子が垣間見れた。
 だがだが、十一月に入る最中、千里は大騒ぎ、なんと舞子と紘一が出来た
という記念日、婆が小躍りするように喜んでいる姿が在った。
その情報は早くも芦屋にと蔓延、「ええ~貴方、其れって・・」
「何、関係が出来た事は良い事や無いか・・」
「そうですけど、其れは亮太が噛んで居ませんか・・」
「え、ああ、あいつや、そうやあいつの紹介や無いか・・」
「でしょう、ならそうなり得るわね、あの子凄い・・」
「だな、あいつはこましゃくれているわ、学生で会社を興し、なんとこの家
や千里の家を大事にしているぞ」「だから、中身見て不憫と思えば・・」
「だな、してやられたなアイツに・・」
「笑えるけど、其処は良いかも、此れって関係が続きそうやね」
「ああ、あいつが絡んでいれば安心やないか、無理難題は起きんぞ・・」
「そうですね、あの子はしょさいないから起きないわ」
「だな、あいつにまたも仕込まれたか、遣り居るわい・・」「貴方・・」
「良いじゃないか、此れで紘一も家族が出来たやないか然も亮太の紹介や」
大笑いするしかない、其れ程弱みに付け込まれていると知らされた。
 だがその間、亮太は毎週一度東大阪の八尾の家に通っている。
一週間の中で金曜日から日曜日までは舞子は千里の家にと決まり、
月曜日には八尾に戻っているのだ。
戻っている内の一日は亮太が顔を出していた。
まるでカルテットの様に四人で奏で出る音は美しい音色、時にはフォルテで
醸し出し、舞い踊りながら演奏かとまがなうほど四人は其処に狂って往く、
誰もが出来る仕技じゃない、だから燃えるし尽きるまで貪る、事を重ねる
都度抱合いは深みを増し、序に誰もが亮太の思いを叶える力を蓄えて行く。
 遂に亮太の縄張りは完成しつつあった、郷と大阪の松原、其れに晴美さん
のグル-プや此の八尾の三人そうして凄いのは、あの芦屋と千里も知らぬ間
に亮太の動く範囲にと加えられて行く。
着々と仕組まれて行く亮太の領域、あらゆる方面に影響をする存在になる。

 平成九年になってもその仕組みと組織は存在するし、
一層関係は蜜に為りつつある。
会社も既に大きく羽ばたき、世間に知れ渡るほど成長を重ねて来た。
 平成十年三月、亮太は大学を卒業、晴れて社会人にと羽ばたく日が来た。
郷に戻り、晴子と抱合い長い間泣き通しの晴子、感慨無量の中で股を開き、
歓喜する肉と共に晴子は生涯唯一の喜びを忘れまいと肉に染込ませ迎える。
 「琴音・・」「ああ、既に太田さんが告白されて、琴音も相談を受けて
いるよ、良いのか・・」「お前が良いなら構わないし、良いの・・」
「ああ、琴音は大事な妹や・・」「私と同じじゃ駄目なの・・」
「ええ、阿保や、其処は間違えるな、妹はまともに生きらせるわ・・」
「お前・・」「その分、晴子が僕を背負うんだぞ・・」「あんた・・」
今迄お前よばわりが,その時から【あんた】と言い方を変える晴子、
其れ程此の五年間、しこたま亮太に凌駕され続けた身体、もう誰も入れる
余地など無い、女冥利に尽きる幸せと感激を嫌ほど知る肉は、漸く柵から
抜け出て、晴れて晴子は身も心も授けて来た、義息子を手放す時が迫って
いると嫌ほど知らされた。
 嬉しい反面、悲しい先が見えだすと遣る瀬無い、一番大切な男と息子を
だぶらせて、一世一代の受ける女の身の嬉々の極意、
晴子は芯から身を受けるまま泣いていた。

           つづく・・・・。