時代小説≪ 闇を弄ぶ奴、陽下参上 ・・弐拾五 ≫
男衆が戻られ始まった、隣どうしで話すから煩い、子供も大はしゃぎ、
至る所で何処に植えるかと話が進んで行った。
「兆さん、お金良いのか・・」「え~其れは準備してる、今配りましょう」
またまた其れで場は大騒ぎ、男一人に小粒銀四個が手渡されると大変、
横で妻が捥ぎ取る姿に皆が大笑いされた。
こうして騒々しい部屋も夜中漸く収まる、早く白川屋が来てと頼まれる
始末、兆次は笑いながら皆を送り出した。
「ふ~大変だぎゃ、兆次さん・・」「御免、此処の行く末には必要だと・・」
「聞いたが大丈夫か・・」「え~何とか為りますよ」「金・・」「報奨金・・」
「ええ~では・・」「ええ~皆世話に為った人に配るんです・・」「ひや~・・」
聡次郎はたまげた、此れほど豪儀な男かと今更知らされる。
「さてと・・、あんた如何する」「ウン・・、話をしに向う・・」
「そうか、此処には・・」「朝まで帰らん」「じゃ~残り物持って行って・・」
「良いね、其れでな・・、あいつにタエちゃん駄目か・・」
「ぇ・・、ア~そうか、良いよ、あんたはミサが居るしね」「御願い・・」
「良いわ、タエに言う、此処は良いから行け・・」
律が笑いながら食べ物を皿に乗せてくれる。
「じゃ~・・」「おいおい・・、今から何処に行くんだ、俺も・・」
「ええ~あんたは邪魔・・」「邪魔・・」
「ぁあ~そうだ、あんたはほらこの子が添い寝するよ」
「え・ええ~・・、嘘・・、この子が・・、またまた婆様・・」
「要らないのか・・、タエ要らないと・・」「もう~酷い・・」
「うへ~婆様・・・・本気で・・」「ぁあ~兆さんの連れなら何でも良い・・」
「うほ~、じゃじゃ俺と寝てくれるんだな・・」「ぁあ~其の積りじゃが・・」
「いやっほ~良いぞ良いぞ・・、婆様~感謝・・」「これ~抱きつくな・・」
聡次郎は思わぬ事に為りそうで興奮して居た。
「あんた、宜しくね・・」「え、いやこちらこそじゃ、ついてきて良かった」
満面笑顔で聡次郎は喜んでいた。
「では部屋に行こうね・・」「おう~行こう、婆様お休み・・」
「はいはい・・、お休みなさい・・」苦笑いで二人を見送る。
(ふ~あいつ良事をここに招いてくれた、最高な男じゃが、ミサ構わない
抱きついて善がれ、夫も見てくれているよ・・)律は手を合わせて思う。
「貴方・・」「寝させてくれるか・・」「うんん・・もう意地悪ね・・」
拗ねているが顔は笑顔、其れで兆次は部屋に上がると喪服を脱がし
お互いが素っ裸で横たえ時間は充分在る、
今夜はミサのために尽くそうと決めて懸かる。
ミサとて夫が亡くなり間が無いのに男に抱かれていた、
もう其れで総て新しい道にと上がり歩こうと先程決めたばかり、
仏殿で長い間其れを知らせ、此れからは幸せになるねと誓っていた。
聡次郎は夢の中、妻とは別の女は中村の女郎しか知らない、
今夜は素人の娘、其れも二十歳前とくるからなにおかいわん、
聡次郎は焦り瞬く間に相手のなかで果ててしまう、甲斐甲斐しく抱いて
タエに尽くされると聡次郎は蘇り挑む、其れがなんと限り無い貪欲な
若い娘、聡次郎は生まれて初めて数回挑み懸かり、
朝方には酒が残る体はぶっ倒れていた。
「うふっ・・、あの人には適わないけど頑張ったね・・」
タエは笑いながら部屋を出て律に送り出された。
昼過ぎ兆次が戻ると聡次郎が笑顔で迎える、昼食を食べると二人は
又直くると言い残して其処を離れた。
そうして、「おい、感謝だ・・」「・・」「おいおい、何とか言えよ、あ、
そうか兆次殿、感謝致します・・」「ですね・・、如何でした・・」
「最高じゃ、あの若さは凄いわ・・」「ですか・・」
「感謝するだぎゃ、本当に着いて来て良かった」「・・」「で今度は・・」
「今度はそうは行きませんよ」「何処・・」「似た様な集落」「では蚕・・」
「そう為ります」「お前は・・、いや兆次殿は凄いわ・・」
そんな会話であの部落に入り、皆を集めてと頼んでいた。
男は山に篭り居ない、其処で婦人を集めて話をすると大喜び、
直に男を山から下ろすと大騒ぎ、其の知らせ方が傑作、
なんと三つの大きな釜戸が外に在る、ソコに薪を押込んで烽火を挙げて
いる、三つの烽火が濛々と天に昇る。
聞くと三つは急用、直に山を下り戻れの知らせ、二つ烽火は明日降りろ
、一つは手があいたら戻れとの知らせだと聞く。
大きな山、四つに囲まれた谷、烽火で呼び戻すとは粋だと兆次も聡次郎
も苦笑いする。
夕方驚いた、本当にあの烽火が見えたのか男が集まる、
其処でも馬の背から降ろした荷物に酒や宛が在り、
皆が喜んで酒盛り、既に婦人達には詳しく兆次が話を済ませているから、
めいめいの家族が寄り聞いている。
そうして小粒銀を四個受け取り、総てヤル気を見せて喜ばれる、
其の夜も賑やかだが此処は前の集落のような楽しみは無い
、聡次郎も周りを見てそう思えた。
「ふ~飲んだ」昼前皆に送出され、此処と白川屋は山ひとつ越えれば
行ける、其れに皆が白川屋なら賛成だと言われ、兆次もこの谷では心配
は無い、軽い脚で山を越えて行った。
「アア~兆次様、ようこそ・・、これ~奥様を呼んで・・」
番頭さんが慌てて迎えてくれた。
「ま~ま~来てくれたんね」「奥様先にお話が・・」「あとで良いじゃない・・」
「いえ、先に・・」番頭さんも座らせて兆次は話をする。
「ひえ~では・・」「ええ~良いでしょうか・・」
「良いどころか大賛成、じゃ~指導者を行かせるね、で幾らぐらい苗木・・」
「ニ箇所で五千は如何です・・」「え・ええ~・・」
「此れから隣の集落にも話をしたいと、増えると思いするがまするが・・」
「ま~番頭さん、大変よ・・」「ええ~聞いて嬉しくて・・、何とかします」
「御願いね、そうね・・、貴方はなんて人なの、あ・・、横のお方は・・」
「用心棒兼付き添いです、聡次郎と申します」「そう、御苦労様ね・・」
ルミは美しい顔を綻ばせて兆次を見ている。
「さ~奥の部屋に・・」二人は店先から奥にと向う。
そこで此処の藩の経緯を聞いた。
「へ~早い動きですね、では此処は・・」「総替えだそうよ・・」
「では奥方様は・・」「如何にか何も知らないから許されると、此処に戻る」
「そうでしたか・・」「全部貴方の御蔭ね・・」「で・・、木曽屋は・・」
「もうアソコは誰も居ないお城の重臣と隣の若様達も皆連れて行かれた、
高山のお城に幽閉だそうよ、其処で幕府からの沙汰を待つと聞いた・・」
「ではあそこのご内儀も・・」「え~皆連れて行かれた・・」「然様ですか・・」
「貴方、暫く居るでしょう・・」「ぇ・・、・・」
「もう~苗木や手配見届けて下さらない・・」
「そうか・・、じゃ~此処でノンビリと・・」「そうして下さいね・・」
喜ぶ顔が又素敵、兆次は早くも股座が騒ぐ。
「挨拶に行きますね」「え・・、アア~女将さんね・・、驚くわよ」
笑いながら見送られる。
「おい・・、イヤ兆次殿、別嬪さんだぞ、凄い綺麗・・」「ぁあ~そうだね」
「おいおい・・、まさかお前・・」「良いじゃ無いですか、行きますよ」
「アア~あんた~・・」宿の土間で見付かると走りより抱き付かれる。
「挨拶に・・」「ウフッ・・、聞いたわ、あんた遣るじゃ無い・・」「えっ・・」
「此処も掃除してくれたんだってね、いい気味よ、胸がスカッとした、
皆がそう言っているだがね・・」「・・、・・」「横の人は・・」
「遅れました、兆次殿の付き添いです」
「ま~そうなの・・、うふっ・・、あんた身動き取れないね・・」「えっ・・」
「良いわ、任せて・・」「女将さん・・」
「いえね、親戚の子がお城からお暇が出て新しく来られる人に使えるにも
今は家で待機だと・・」「ぇ・・、其れが・・」
「如何・・、この方に良い子が居るんだけど・・」「女将さん・・」
「按摩と此処を掃除してくれたお礼、あんたは要らないだろう・・」
「ええ~・・」「うふっ・・、此処で預かろうか・・」「女将さん・・」
「如何・・、付き添いのお方・・」「イヤ~面目ない、拙者は其の方が良い、
兆次殿、俺は此処で世話に為る・・」「聡次郎さん・・」
「イヤイヤ・・、そうする、女将さん宜しく頼む・・」
「あいよ、兆さんの連れなら何でもしてあげるよ」聡次郎は喜んだ。
「で・・、息子は・・」「其れよ、あんたに相談が在る・・」
其処から息子の縁談まとめて欲しいと頼まれた。
「良いですよ、あの谷でも今後付合いが出来るから任せて・・」
「嬉しいね、息子が喜ぶ・・」「今何処に・・」
「山に行っている、獣に罠を仕掛けたのを見にね・・」
「そう・・、では戻ると聞いてみますね」「御願い・・」手を握り頷かれた。
「おい・・、お前は凄いな・・、いや兆次殿は最高じゃ・・」
「もう~良いですよ、楽しんだ分戻れば奥様を・・」「ぁあ~大事にする・・」
そう返事しながらもソワソワする総次郎だった。
宿から出たがらない聡次郎を残して兆次は気に為る家にと向かう。
「アア~あんた~は・・、大変・・、おとうさ~ん・・」
「なんじゃ大きな声で、え・え・、ア~あんたは・・、嬉しいね、おい酒だ」
「ぁいよ・・」大歓迎された。
そこで命の恩人だと手を握り男泣きされる、其れはあのお城内の普請
が終ると今度は別の場所にと人夫と大工左官が連れて行ったと話す。
「では・・」「大方漸くカラクリが見えた、可愛そうに口封じと思えるんじゃ、
働いた仲間を救う事は出来ない・・」「ええ~では皆・・」「そう・・」
「何処に・・」「大方、側用人の里かと思える」「ええ~では・・」
「そこで様子見じゃな・・、事が公に為りそうならバッサリ・・」
「うへ~無体な・・」「そうでもしないと・・」「でも事は公に・・」
「ぁあ~そうじゃ、だから始末に苦よしていると思うが・・」「側用人は・・」
「逃げた・・」「ええ~・・」「そう・・、いち早く寺に侍が押寄せたと聞いた
途端、姿が消えた・・」「ま~・・、では里・・」
「違うな、其処はいち早く侍が行く・・」「でも其処に普請をした者が・・」
「其処じゃ、どうなるかと皆が、其れでお侍に踏込むのは後にしてと
頼み込んだ人が居る」「誰・・」「白川屋の奥様・・」「ええ~・・」
本人からではなく他人から知らされる。
「では・・」「お城に陣取る侍も其の件は動いておられぬが何時までか・・」
「大変じゃ・・」兆次は急いで白川屋に戻り問い質す。
「え~行きました、でも女の私は其処までですのよ」「そうでしたか・・」
腕を組んで兆次は考えている。
もうじたばたしても駄目だろうにと思えるが、追込まれた獣はそんな
柔な考えでは無いと思えた。
(いかんぞ、此れは駄目じゃ・・)兆次は益々慌てて考えも纏まらない。
つづく・・・・。