痛快時代≪ 謀神・・よろずや宗介、第二部 -終節 ≫

 延々と続く男の話と問いかけに宗介は反応をしない、
其れをみて男はいっそう声を荒げる。
「如何だ参ったか・・、うぬらにかき回されるほど落ちては居ないぞ・・」
「ほほう~、申されますな・・」「何~貴様・・」「そなたは何方かな・・」
「何方だと・・、たわけ~俺は竜安寺の後藤だぞ、知らぬのか・・」
「竜安寺とな・・、潰れたのでは御座らぬか・・」
「何抜かす、砦だけじゃ、他にもたくさん砦は在るわ」
「はは~ン・・、それらも潰さねば判らぬ御仁ですかな・・」
「なんと申した許さぬ」「ではご随意に処断為され、後でここは全滅いたす」
「大法螺抜かすでは無いわ、お主如きが死んでも何も変らぬ、コレッもう
良いぞ首を跳ねろ~構わぬ」男は立ち上がり吼えた。
「宜しい首は差出そう、だが直に此処に大軍が押し寄せるぞ良いな・・」
「なんだと未だ抜かすか貴様は誰だ・・、名を名乗れ・・」
「震えるな・・、謀神と言われておるが・・」
「なんだと~嘘をつけ此処にいるのが謀神だと、あはあ~貴様其の名前で
怖気つくとでも、構わぬかかれ」「待て後藤殿、謀神と言われたな名は・・」
「山下宗介で御座る」「う・う・ウヌッ、なんとそなた拙者だ、間島寅之助だ」
「オウ~そなたは生きておられたか・・」「マタマタご冗談を、して山下様は
どうして此処に・・、あぶのう御座る」「知って参っている」「何故に・・」
「拙者此処で人を大勢殺めるのはすかぬが今回やもえない事情で砦を潰した
罪の償いをしに参っている」
「なななんとでは本当にそなたが此処の砦を・・」「左様、手を下し申した」
「なんとぬけぬけと白状なさる、命が御座らぬぞ」
「承知致しているがそなたらも総て殺されるぞ」「ウヌ、なんでそうなり申す」
「ご存知であろう、間島殿・・、拙者何事も総て手は打つ男ぞ、のめのめと
殺されたままでは済まぬわ・・」「ぇ・・、それは・・」
「二日持つかのう、持たぬであろう、砦に居なくて助かった身だが可愛そう」
「そなた、嘘では在るまいな・・」「嘘を申したとしても此処で証明は出来ぬ、
二日待たれよ、結果が出るが・・」「・・、・・」
先ほど声を張り上げていた男が気が着いて体を震わせ立ち尽くす。
「仲間が大勢死んだ場所だ・・、拙者を殺し弔うなら構わぬぞ・・」
「聞くが二日後如何なる」「アハッ、手の内を曝け出せと、無理な話じゃわ、
参考に申すが、京極家は動かさぬぞ」「ええ~何故に・・」
「そなたらをもう相手にはしないわ・・、相手は既に八角家のみじゃ・・、
相手にはされぬ」「では何処・・」「数が多くて言い切れぬ」「マサか・・」
「そう其のまさかだ、良いか身の程知らず領地を広げようと足掻く輩は拙者が
摘取る、榊原殿は理解為され、ここは聞く耳など無い様子でだから成敗した。
だが総ては可愛そうだからな・・」
「ではあの田上殿もそう思いで為されたのか・・」「左様・・」
「ではここは如何すれば良い・・」
「さすが間島殿・・、そなただけは見識が未だ在る様子じゃ、此処の生きる
道は一つ、土地を捨てるかはたまた京極家に下るかどっちかだ、京極家なら
橋渡し致すが・・」「なんと・・、まさか・・」
「ご存知であろう、殿様と拙者の仲・・」「しって居るが当地は其処まで・・」
「そうもう駄目だ生き残れぬぞ・・」「・・、・・」
「おい、縄を解け、部屋に上がっていただき温かい物、後藤殿早く致せ」
「え・、ぁ・・、御意、只今」慌てて縄を解き部屋に宗介を上げる。
 「竜安寺孝道じゃ、そなたとは二度面識が御座ったな・・」「お元気で・・」
「何抜かすそなたの顔も見たくないわ・・」「アハッ言えますな・・」
「して如何して今回先に参らぬ」「参れば事は変わりましたかな・・」
「其れは・・」「既に逸る部下を宥める事は当時無理でしょう」「ウヌ~・・」
「今はそうでも御座らぬが、其れは力を失い、ここは態を為しては居ない」
「ウン・・」「如何です、ここらで勝組に乗られては拙者が上手く仲介致す」
「そなた余程現実が見得ぬと見るが、囚われの身ぞ・・」
「ウフッ、確かに其れは囮ですぞ、勘違いなさるな相手は待ち構えており、
一人の男の首など今は値打ちは御座らぬ」「謀神なら如何だ」
「確かに・・、でも其れは大きな獣の尾を踏んだ事に為りまする」
「ウヌッ、こ奴・・」「しつれいぞ、竜安寺、そなたにこ奴と呼ばれる筋合
いは無いと心得よ、やがて消えるろうそくも既に火は小さくなっているぞ、
二日後地獄で会おうぞ・・」「・・、・・」宗介の凛とした声に押された。
「さ~竜安寺、殺すなら早く致せ、そなたの顔などみとう無いわ、小心者目、
早く殺して置くべきだった。良いか聞け、無くなった部下の家族を追い払う
ほどの情けない主に、誰が最後まで着いて行くと思う、考え違いなさるな、
そなたには上に立つ技量など皆目見当たらぬわ、居並ぶ方々も心では
そう思っているぞ」「何~愚弄致すか・・」
「ほら痛い所をつかれ其れが小心者の姿じゃ、かわいそうなのは従う部下ぞ、
明日に成ればどれ位此処に集まるかな・・、半分はいまいのう・・」
「オノレッ・・、言わせておけばのうのうと・・」
「そうじゃ早く口を塞がぬと部下が段々減るぞ」
いやはや考えられぬ雑言をはく宗介、皆が居並びオロオロしていた。
 「間島殿、聞かれたか、そなたも違う大将なら今では一国の主に成られ
て居様に選び違いかな、それとも仕方なくかな・・」「・・、それは・・」
「いいなされ、既に座る半分は明日には顔を見れぬ、世の中はソンナもの」
「心では死んだ兵の家族の仕打ちを快くは思わぬ人ばかりじゃ・・、
明日は我が身と申す、既に自分の置かれる姿をこの頭が悪い御仁は
教えてしまったんだ・・、そんな仕打ちをされると判ると誰が命を捧げる、
戯けらしいと思うのが正常じゃ、竜安寺は其処が判らぬ男よ、幾ら頭数を
そろえても戦には勝てぬ、命を投げ出すほどの頭で無いと誰も着いて来て
くれぬは・・、それすら判らぬ奴だわ、悲しいかな居並ぶ御仁は選ぶ相手
を間違ったな・・」「コイツ許さぬもうどうでも良いわ殺せ殺すんだ」
竜安寺は名前を呼び捨てにされてから怒り心頭でもうが我慢の限界。
 「待ち為され、孝道殿・・」「叔母上・・」「そなた大間違いをされてるぞ」
「どうして此処に・・」「聞いて案じて参った」
「ですがここは伯母上が来る場所では無いですぞ・・」
「其れを来させたのはそなたじゃ、この御仁は健気に己の犯した罪を償い
に参られただけだ、部下の家族を追い出しに懸かったのはそなたじゃ、
家も何も文句言わず此処を出様と決めていた。其れが一言文句を言いに
出たのを判らぬのか・・」宗介が吃驚した、あのナナの母上だった。
「良いかね、ことは総てそなたの情けない政治からだ、此処まで落とすと
は嘆かわしいわ」「伯母上其処まで言わなくてもいいでは在りませぬか・・」
「未だ判らぬのか・・居並ぶ部下の顔を見なされ、皆呆れているぞ、ここは
そなたが降りて事を納め」「降りる・・」「そうじゃ、そなたが降りれば納まる」
「収まる何が・・」「救われぬ人じゃ、同じ血が流れてると思うと嘆かわしい
山下様帰ろう」「え・・」「良いから帰るぞ、構わぬ」「え・ええ~婆様・・」
「ついてきなされ、貰い受けるぞ、良いな・・」「叔母上・・」
「煩い、かえる、来為され」宗介は驚きながら従う。
みなはとめもせず見送るが地団太踏む姿が壇上に居る、
真、見事な婆様の姿だった。
 「フ~ぁ・アア~・・」「如何された婆様・・」「腰が腰が抜けたわ・・」
「アハッ、背負いますか・・」「頼む・・」笑いながら背中に乗られわらう。
 家に戻るとれるナナが抱きついて泣かれる.其れからの話は大笑い、
どうして其処まで相手を挑発されたと聞かれ、ここは皆の思いを言いたい
と頑張ったと宗介は笑う。
 その夜はナナがしがみ付いて離してはくれない、其れはこの世の最後
かと思うほど乱れに乱ればあ様も呆れて耳を塞がれる。
 あくる朝、見覚えが在る四人の男がばあ様を尋ねて家に来た。
長い話しを終えて四人は帰られるが・・。
「山下様・・、御蔭で此処にみなは残れそうじゃ・・」
「左様か良いのですか・・」「良いとも、此処でもう一度作り直す」
「作り直すとは・・」「頭を挿げ替えるが・・、ついては相談が・・」
「なんでしょう・・」「京極家から誰か寄こしてくれぬか・・」
「え・ええ~まさか・・」「そうじゃみなが相談して決めたと申した」
「ほう~それでは・・」「そう、ここは京極配下に成りたいと申し出が在る」
「左様ですか・・」「骨をおって頂けまいか・・」
「良いですよ、喜んで・・、では此処に四十貫御座るが、其れをばあ様に
渡しますゆえ、当座の生活に困る人は面倒を見て下され」
「いいが其れは駄目だ」「なんでです・・」
「もう出て行くと決めた人が大勢いるんだ」「ええ~此れでも・・」
「そうだ、だからそれらを頼めるか・・」「其れは必ず・・」
「いい人だな・・、行くものは幸せじゃわ・・」そう言われる。
 その日の夕方竜安寺殿は首を跳ねられて宗介は京極家にと走る、
そこで一切を話して受けていただいてこの件は何とか治まる。
 そうして二十家族を引き連れて宗介は浅井家の出家にと向かう。
そこで総て家が決まり、見合いも後日行うと決まって
村は大騒ぎになっていた。
 後に此処に来た家族であの浅井家の重臣と為られた名だたる
御仁が多く輩出される。
語り継がれた家臣は田辺家、保多家、遠藤家と多いがそれらは
何代も後に為る話だった。
漸く用事も終り、梢が待つマツ婆様の家にと向かう宗介の姿が在る。

             第二部・・・終節・・・・。























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