慕愛小説《 有り得ない道筋・・27 》

 龍哉は、又も泉家に居る。そこですでに設計図が出来上がり、
泰一が龍哉を呼んでいた。
「此処は・・」「はい、其処は休憩室か娯楽室にと・・」
「下も同じ真ん中に有るが・・」「ああ其処は食堂と聞いて居るんですが」
「ええ・・」「おいおい、其処弄るなよ、あいつが怒ろうが・・」
「え、あいつ・・、ああ~大奥様か、なんとでは食事が大旦那様・・」
「こら、そんな呼方するな驚くが、こいつ、あのな学校から直接こらせる
からお腹が空くと言ってな」「凄いぞ~、良いが良いですよ其れ・・」
「そうか、あいつの案や、手伝いは親に任せると言いよったが・・」
「でも回りが煩いと・・」「良い事やが、此処で子供の声が聞けるなぞ
考えた事も無いが、良いから遠慮は無いぞ、でな部屋の数見たか・・」
「ええ、沢山有るし・・」「意見が聞きたいが、一年生から受付けたい、
一学年二組、其れが三年生までじゃ、男女共学じゃいけないと、
女学校が有るからな・・二階は女子や、三階は男の子」
「大旦那様、最高です、じゃ六教室二階と三階ですね・・」
「一クラス二十名前後や、先生を頼むぞ・・」「はい、必ず・・」
「ようし、恵子~」「もう大きな声で隣に控えて聞いて居たんですよ」
「ええ、真か拙いぞ龍哉君・・」「そうですね、拙いですね」
「此れ、アンタ迄・・」苦笑いされ、話を聞いて何度も頷かれる。
 「あのう御願いが・・」「なあに、龍哉君・・」
「え、お前声が変やぞ・・」「だって愛しい子やがね、声も変わるが・・」
大笑いされた。
「受講料は高いんですか・・」「其処は何とでも出来るが、何か考え有るん
かね・・」「ええ、一般と横並びで、中には高い所も有るんですが・・、
此処はどうかと聞いたんです」
「聞いて居るが、あんたの講座安過ぎるってね、でも考えたらそれでも沢山
生徒が集まれば大変な金額に成るが、だから少し安くしようと考えている」
「大奥様凄い、じゃじゃお願いします、親が喜ぶ・・」
「ええ、そうして計算させるわ、手伝いも来てくれるし其処はお金が出て
行かないしね・・」「おいおい、君達、何時もそんなに和やかなんか・・」
「え、貴方今日は貴方が居るからこれでも何時もよりテンションが下がって
いるのよ」「うひゃ~、聞いたか清水君、負けるな・・」
「え、本当にこの青年が羨ましいですよ・・」
「あのう其れでですね、教室の中にロッカ-、狭いのでいいですから後ろに
どうかと・・」「おう、良いぞ良いやないかそうかロッカ-やな・・」
そんな会話も楽しかった。
後で夕食付き合えと泰一さんは龍哉を離されなかった。
 夕食を思わぬ場所で食べる事となり、慌てる龍哉を見た、恵子はお腹を
抱えて笑われる。
家の主の泰一さんも、今夜は愉快だと言って頂く。
 「後は工事を急かせるぞ、途中で気が付けば直させる、女の子のトイレは
男と違うから念入りに造らせる」「有難う御座います、お願いがあります」
「何や・・」「此の事は、僕が譲れない部分なんですが、この塾は大奥様に
委ねると決めて居るんです、如何か其処は認めて頂けませんか・・」
「え、君が居るじゃないか・・」「居ますが表には出ません、裏方で動き、
必ず奥様をサポ-トして参ります、如何か認めて下さい・・」
「ええ、龍哉嫌だよ、龍哉が上や・・」
「いいえ、此処は譲らない、必ず最高な塾に伸し上る、そうすれば大奥様
以外には居ない、大旦那様は理事長と、学長は奥様に決めて居るんです、
此れを行く行くは財団法人として、名古屋から傑出な生徒をと塾で育てて
見たいんです」「じゃ君がすれば・・」
「僕は未だ色々と首を突っ込みたいことが在ります、名目だけでも良いから
お願いしたい、後ろに僕も皆も控えていますから・・」「恵子・・」
「うふっ、そうかね矢張ね、言った事理解出来るんだね」
「少しですが歩む道がほんのりと見えつつあるんです、未だ他の世界も
見たいし・・」「良いわ、龍哉の頼みなら受けるしか無いわね、紀子を
其処に据えるわ・・」「ええ、其処は別にと考えが有るんですが・・」
「ええ、じゃあの子に何か・・」「後で相談します・・」
「く~良いわね、龍哉が大好きやで、貴方聞かれました・・」
「・・、聞いて居るが、本当に仲が良過ぎるぞ・・」言って大笑いされた。
 遂に完成の形が頭に浮かんで来た。
(これで良いが・・)思わぬ事でお世話になる和泉家、必ず恩返しと心に誓う。
 部屋に戻ると、行き成り美恵さんから、大きな声で来て早く・・、
と叫ばれた。
「え、何、え~なんやこの荷物・・、何でお米か・・、え、何や~玉ねぎや
ゴボウ人参か~、何かするんか・・」
「あのね、驚くわ、あんたあの谷の公民館と思えるが・・」
「・・、え、えあああ~じゃ其処か、よう判ったな・・」
「あんたが電話番号と住所を書いて置いて来たでしょうが・・」
「そうや・・、く~律儀な人やが、五千円しか置いてないぞ・・」
「ええ、じゃこれ幾らするのよ・・」美恵が驚く。
 本当に驚く龍哉、五千円がこんなものに化けるなんて考えてもいなかった。
「おい、如何しよう・・」「あんた、考える間に何かうかばんの・・」
「え、何・・」「明日行きなさい、其れで倍返しするのや、断りも無しで、
珠代さん抱いた場所やないかね・・」「く~言われるが・・」
「行くの行かないの・・」「行きます、こんな物送られたら行くしか無いわ、
相手はどんな人かな・・」「行けば見える、お礼はその後で良いじゃない」
「だな・・」「全く又縁を作ろうとしているよな・・」「え、美恵さん・・」
「阿保や直ぐばれるが・・、でも其処が見える限り美恵はお前に付きまとって
やる・・」笑われた。
本当に驚かされる、荷物だった。
 翌日、龍哉は取敢えず、相手がどんな家族かも判らずに、名古屋名産や、
お返しに市場で大きな鯛と海老を箱詰めして、車を走らせた。
 「え、もう何でや、ここ等は雨がよく降るな・・」「名古屋を出る時は半分
晴れていた空が、岐阜を超え出すといきなり雨の洗礼、苦笑いしながらナビが
教える場所目掛け向かう、恵那山トンネルを超えると、もう其処は長野県、
其の懸りの飯田市に住所がある。
インタ-を降りてナビに従い走る、北山と言う地域を目指し其処から直ぐと
思える。「ええ、なんとまた山裾か・・」
車は自分が買った四駆、唸り挙げて坂道を登る。
 五分後回りが開け至る所に畑が並んで山に付け傾斜に向かっていた。
「ああ、リンゴや~~」見える限り、リンゴの木が並んでいる。
此処まで来ると壮観な景色、本当に農園に入り込んでいた。
 「あ・・」目当ての其れらしき家が山裾に有り、聞こうとクルマを向ける。
 「あのう、お聞きしますが、松本源治さんのお宅は何処か知りません・・」
「ええ、あんたは何方や・・」「はい、名古屋から来たんですが・・」
「親戚かね・・」「え、今はそうじゃ無いけど、良い人ならそうなれるかも」
「ええ、変な言い方やが、面白いね、アンタ若いやないね幾つ・・」
「年ですか、学生ですが・・」「ま、ええか雨でのう、ビニ-ルが飛ぶからと
見回りやが、腰が痛いわ・・」なんとおうような婦人だった。
 「御出で・・」「ええ・・」「その松本やがね・・」
「ええ、まあ、其れは御無礼でした、知らないから軽口叩いて・・」
「おもろいわ、良いから来て」昔からの家か出んと構える姿は凄味が有った。
車は庭で良いから置いてな、家には居りなさい」そう言われ、従う。
「お爺ちゃん、お客や、ナゴヤナンバ-やで・・」「え、そうか誰や・・」
「ああ、突然で済みません、僕はお米や何か沢山送って頂いた、加藤龍哉と
申します・・」「往々、雨宿りの御人かね、コンでも良いのに・・」
「ええ、そうは行きませんよ、勝手に公民館に入ったり、美味しい桃を断り
なく頂いた者ですから・・」「良いから上がれや、妙子、ビ-ル・・」
「ええ、あんたとし幾つや・・」「あと一年かかりますね頂くの・・」
「だろうがそんで年聞いたんじゃがね・・」「ええ・・」
「だって御爺ちゃんの相手にはと考えたからや・・」「ええ・・」
笑うしかなかった。
古い日本家屋其の物、最高に懐かしいと思えた。
 「この度は、とんでもない事をして真申し訳ありませんでした」
「おいおい、挨拶は苦手や・・」
「だからおじいちゃん、世中そんな甘いもんやないと判っただろうがね、
お酒の相手には為れないよ」「だな・・」
「でも日本酒なら、傍でお注ぎ出来ますが・・」「ええ、あんた・・」
「龍哉やと申します、呼び捨てで呼んでください」
「く~う、泣かせるが、日本酒か、当たりやわしはビ‐ルは苦手や、
焼酎が一番ええがね」笑われるが歯が少し欠けて居られた。
年は既に七十過ぎか、其れでもかくしゃくとされて居た。
 「インスタントやでどうぞ」外で出会ったおばさんが持って来られた。
 其処から何でアソコに飛込んだかを話し始める龍哉、其のおばさんも
座られ聞いてくれた。
「ええ、じゃじゃあの奥のダム工事かね、なんと落盤・・、可愛そうにのう
あんたの父親・・」「アソコらは硬そうな岩でも砕けるが、元は火山灰やが」
そう言われる。
「あ、そうやおじいちゃん、歯が少ないけど齧れるんか・・」
「く~お前言いたい事を平気で、こいつ良い、妙子堪らんが憎たらしいぞ」
「あはっ、答えんか聞かれたろうが・・」
「ああ、そうや、御心配じゃろうが食べ物には忌々しい程食べれるが・・、
入れ歯も有るしな、心配ご無用やで・・」「じゃじゃ、肉は、エビは・・」
「食べるが、最高や、何で聞く・・」「如何かなと思って持って来た・・」
「ええ、あんた・・」「おばちゃん、車に来て・・」「あいよ・・」
トランクからハッポウスチロ-ル箱を二つ出して家に入る。
 「見て・・」「うわわ~、何々肉の塊やし、ええ海老海老でも伊勢海老
じゃイセエビじゃ無いか御爺ちゃん」
「聞えるが~でかい声出して、見ているが驚いて声が出んだけじゃが・・」
何とも言えない家族、龍哉は其処で安堵する。
 だが、此の肉は人を呼び、伊勢海老が酒の相手を呼び込んでしまう。
家のおばちゃんが電話し捲られ、来るわ来る来る何とも言えない年寄りが
集まって来た。
其処から大宴会、女の方は台所で大賑わい、肉のブロックを切りながら
大騒ぎだった。
 眼下を見下ろせる部屋、二部屋襖を外して宴会、本当に手際が良過ぎる
から龍哉も笑顔で見惚れる。
「おう、あいつら未だか・・」「ええ、もう戻るが、何で・・」
「阿保や海老など手を掛けるなと言ったろうが・・」
「ああ珠美か・・、なんとおじいちゃん、凄いが本職を待っていたんか・・」
「ほうよ、あんな高価なもんな素人とが捌けば美味しさが逃げるぞ」
「言えるが源爺ちゃん、凄い・・」
「お前等みたいにの何でも噛んでもごった煮されては物が可哀そうやが・・」
「言えるが~・・、でも其処は学校給食やし、腕は有るんやで・・」
ご婦人たちが大笑いされる。
そんな中二台の軽が庭に滑り込んで来た。
(ええ、三人・・)雨の中家に駆けこまれた。
「なんね、もう早う戻れと・・、え誰ね、車有るが・・」
「あのさ桃泥棒やと・・」「え・、アあ・あ谷のか・・、来られたん・・」
「ええ、御米やジャガイモでのう笑えるが、困ってな珠美達を待っていた」
「何で、沢山相手できるじゃないね、見てよ・・」
「それがな霜降りの極上肉でブロックや、もう一つは伊勢海老やぞ・・、
でかいし元気や・・」「ええ、じゃじゃ桃が化けたん・・、ま~可哀そうに
お兄さん、アンタ貧乏くじやで、あんなもので肉と伊勢海老か・・、酷い
おじいちゃんやな・・」其処で十人くらいがお腹抱えて大笑いされて居た。
 日本は高齢者が多くなったと聞いてはいるが、真此処では其れを実感する
ほどの人達だった。

                つづく・・・・。
















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