痛快小説家、上山惣一 [痛快、ロマン、官能]

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zoom RSS 忘愛小説九十五弾≪セピア色の世界からの手紙・・15≫

<<   作成日時 : 2017/06/17 02:04   >>

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 八月十二日、朝から墓所に省吾は居た、姉の墓が出来上がり、
今日は据え付けをしている。
徹と芳樹が手伝ってくれている。昼過ぎには据え付け完了、
墓地は序にコンクリ−トで奇麗に舗装、そこを見届けて遅い昼食を居間
で皆が食べる。
省吾が気になっていた一つが終える、一抹の寂しさは在るが姉の願い
を叶えた事で省吾は安堵する。
 「さてと・・、此れからじゃな・・」「多恵さん・・」
「お前ら何時までもグズグジ言いながらなんもできゃ〜せんだろうが・・」
「仕方ないがそうなんだ・・」「じゃ、何かしんさい・・」「何する」
「其処を皆が集まり考えて計画書なんぞ作れば良いじゃないか・・」
「計画書・・」「そうじゃ、何するにも丼ぶり勘定じゃいけんけ〜此れから
其れを如何進めるとか如何広げるか自信が在れば多恵に寄こせ・・」
「おばさん・・」「良いな、其れも個人の思いなんぞ寄越すな、あくまでも
此処の為、地域の為なら考える」「ええ〜多恵さんがか・・」
「阿呆、わしじゃお前らと同じじゃ、省吾に見せて考えて貰うんじゃ・・」
「なんとじゃ、お前・・」「今初めて聞いたが、有るんなら考える」
「ええ〜真か〜、聞いたか徹・・」「良いぞ此れは、本気で考えるか・・」
「そうじゃこうしちゃ〜居れんぞ、お前澄香呼べや、そうじゃ梓と康太も
じゃ、公民館集合・・」「よっしゃ・・、呼ぶ、省吾今は帰るが頼むぞ・・」
「ええ〜お前ら・・」もう家には居ない、飛び散った。
 「あはっ・・、尻叩くのは楽しいぞ・・」多恵さんが大笑いされた。
「あんた、、良い事じゃないかね・・」「え・・、恵子・・」
「だって夢があれば良い」「夢だけか・・」「現実にすればあんたが・・」
「ええ〜・・」「此処に来たいし恵子が出来る事はする、あんた次第・・」
「お前・・」「香帆も聞くと賛成する」
そんな会話をすると多恵さんが泣かれ出す、碧も同じ顔だった。
 いろいろな人が出入りされる、其処は省吾に期待する半面、
目当ては子供、苦笑いするほど可愛がられる。
ここ等じゃ幼い子は皆無、そんな場所で昔懐かしい子守りに浸られる
姿は目頭が熱くなる。
 「あんた、此処は良いから行きなよ・・」「えっ・・」「馬鹿ね、睦さん・・」
「あ・・、恵子・・」「良いから勤め果たして・・」「・・、・・」
何も言えない、総て知っているから・・。
「じゃ・・」「あいよ、未だ早いけど馴れさせると良いやんか・・」
「あはっ・・、負ける・・」大事な人に背中を押され、其処は省吾も待って
いたのかもしれない、阿吽の呼吸は二人の間には形成されている。
 碧の軽で送られて向かう。
「あんた・・、頑張って、いや楽しんできんさい・・」「碧さん・・」
「うふっ、こんな歳でもあんたに抱かれる身やし、あんたの為なら頑張
れるけ〜・・」そんな話をしながら送られた。
 「今晩は・・」「ま〜誰かいのう夜中じゃろうが・・、・・、え・・、あんた・・」
「久し振り婆ちゃん・・」「え・ええ〜・・、あんたは・・」「僕省吾です・・」
「省吾・・、ええ〜じゃじゃ、岡田のか・・」「はい・・」
「ま〜〜なんとまげな男に為りんさったのう・・、ああ〜ではあんた・・」
「はい・・」「・・、そうか悪いのう、あんたはこの家の子じゃ、何も遠慮は
要らんけ〜、上がりんさいや・・、これ〜睦や・・」
「なあに婆ちゃん、あら、・・、ま〜来てくれたの・・」「早いけど良いか・・」
「・・、うふっ・・、覚悟せんといけんね・・」「覚悟しんさいや・・」
「あら・・、婆ちゃん、この人・・」「ああ〜聞いたが、よう来てくれたね・・、
わしは邪魔だろうから奥に・・」「良いじゃない話すれば、風呂沸かす・・」
「そうか、じゃなんか飲みんさるんか・・」「ビ−ル有るん・・」
「あの子が買いだめしているが、そうかあんたの為にか、笑うが・・」
「婆ちゃん・・」「懐かしいね、あんたはこの家の跡取りじゃ、頼むよ」
「・・、・・」そう言われる。
 思いがけずに判った事実、最初は吃驚したが今の省吾の姿では何も
かも怖い物は無い、あの実の姉を抱いている身、そうして既に自分の
子供がいる立場、いろんな事を思えば、自分が此処の血を繋げている
と聞かされても一晩寝れば理解出来る。
この考えられない気持ちは母の血かそれともこの家の血かは定かでは
無いが、神社であった人がこの家の娘さんと聞かされ、お願いされる。
しかもとんでもない話、省吾の種が欲しいと言われてから、二十日余り、
省吾は遂に意を決して来ていたのだ。
 「聞いたが、大阪で会社かね・・」「婆ちゃん、こまい会社だが・・」
「いんや〜幾らこまくても立派じゃ、直ぐ帰りんさるんか・・」
「それがね、戻るには戻るけどなんか此処に来る用事が出来そう・・」
「え・・、じゃ・・」「そう、此処で何かしてと頼まれている」
「・・、そうかい、良い事じゃないか此処はもう終わりと皆がいんさる、
わしもそうと思う中にのう・・、有り難い事じゃ・・」
「婆ちゃん、未だ何もしとりゃ〜せんけ〜」「うんや〜思いが嬉しいがね、
流石あんたはこの家の子じゃ、今そう感じる」「婆ちゃん・・」
「あんた頼みじゃ、お願いするよ」「何とか頑張るけど此ればかりは・・」
「うふっ、あんた睦を見縊りさんな、あの子は恐ろしいほど頭が切れる
子じゃ、亡くなった母は体が弱くてな其れがあの母親は凄いと思った、
あんたの母が介護できんさる中、あの子は様子を見てて、自分の夫を
頼みんさる。其れも総てわしに知らせて頼むから驚いたがね」
「えっ・・、じゃ婆ちゃん・・」「そうじゃ、わしも考えた、其処までせんでも
ええがと何度もな・・、でもあの子は決意が硬かった、子供が産めんと
判るともう誰がなんと言おうが、この家の為に子供と其ればかり考えて
のう・・」「・・、・・」「何度もしがみ付いて泣かれたが、其れでわしも承諾、
その後二度抱かれたあんたの母親にわしが頼んだんじゃ・・」
「え、じゃ婆ちゃんがか・・」「其れで後は何とでもすると、お願いした・・」
「・・、・・」「最初は嫌と言われてたがその後も来る度に抱かれて行くと、
判るだろう・・」「うん」「漸く子供が出来たと聞いたら泣いたが狭い世間、
以後どうするかと悩んだがこの家の子は欲しい、其れであんたの母親
が最初は家で育てると言い張られ、其処はわしらも引き下がった。
あんたの母親は強いわ、この家の事知られたくないから、わざわざ男を
作りんさった・・」「えっ・・」
「其れが大朝の男じゃ、其れまではこの谷の男だったが流石にそれは
不味いと思ったのか大朝でのう・・」「・・、・・」
「其れがあの男も強か何処で聞いたか、あんたがこの家の子と掴んで
しもうたんじゃろうな、以後色々あってな、其れが遂にこの家にあの男
が来たんじゃ・・」「ええ〜何しに・・」「それが金じゃ・・」「お金・・」
「そう世間に知られたくなければ出せと脅された・・」「なんと・・」
「それでわしは出そうと農協に話を付けて用意したんだ」「婆ちゃん・・」
「それがあの男自慢げにあんたの母親に話したそうじゃ・・」「・・、・・」
「それで怒りんさって・・、其の後は聞いた通り・・」「・・、・・」
「ほんに凄い女性じゃ、あんたを守りたいが為にあんな事をしんさる・・」
 省吾は初めて聞かされる話だった、自分の母が男に溺れていると聞
いて来たが・・、中身は其処かと今更ながらおそまきだが、母の執念を
知らされる。
 「では、僕の為にか・・」「そう為る、あんたの姉は全て知っておりんさる、
あんたの母が亡くなると一月後に此処にきんさった」
「ええ〜聞いて居ないが・・」「其れであんたを大阪に引取ると決めた・・」
「なんと・・」「其れからもう随分と時が過ぎた。今じゃ誰もがあんたはこの
家と関わりが在ると知っておりんさる。其れを聞いた睦が今年初めわし
に話をしてのう、この家の跡取りが居らん、あの人に来て貰おうかといん
さるけ〜、わしはそれは無理じゃ、あの子はあの家の子じゃ表向きは
そうじゃろうが、すると随分と日が経つと又その話を睦がし始めたんだ。
じゃあの人に子供を作って貰おうととんでもない事を聞いたがいけん、
いけんけ〜とわしが宥めるが、日が重なると益々その気になりんさって、
私はこの家と血が繋がらん連れ子、でも婆ちゃん大好きだし、育てて
頂いた恩が在る、東京で勤めていた身を辞めて戻りんさったが・・、
以後はアンタが知っている通りじゃ・・」「そうでしたか、ふ〜凄いな・・」
何度も溜息を点いて省吾は漆塗りの天井を見上げていた。

                        つづく・・・・。






















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