異淫小説102弾《獣を潜ませ生きる・・23》

 紅葉には少し早いかなと思いつつ冴香と車で向かう。
「お兄ちゃん、冴香ねこの件良いかもと思うんよ」「・・」
「だって何をするか知らないけど最近のお兄ちゃん何か悩んでいるみたいだ」
「それでね、何かするにしても舞台が必要じゃない、其処が何とか適う場所
なら良いと思えるけどね」「冴香、お前はどう考えている」
「私か、お兄ちゃん次第かな・・」「俺・・」
「だって冴香一人じゃ何もでけん、お兄ちゃんの後ろから眺める方が大好き」
「でね、あそこ調べたら昔は平家の落ち武者、と言っても侍達じゃないって」
「本当か」「そうみたいよ」「なんとそうか」
返事は其れだけ、だが色々思いを巡らせるが果たしてあそこで宿が持続できる
のかと少し不安、同じ事を引延ばせるなら翔太は気が乗ってこないと思えた。
じゃ何をあそこでするのかと自問自答、だが答えは現れていない、其れほど
暗中模索、知らない土地にと車だけは国道133号線を南下して行く。
無論冴香は翔太が何をするか決めていない事は見える、だが話を聞いてから
何か其処で生まれるかもと其処だけは期待を膨らませて助手席で座っていた。
「あそこの道右よ」冴香が言うままその道にとハンドルを切る。
「へ~三級国道だけど舗装は良いわ、この川が旭川の支流の一つよ」「ほう」
「それがあの谷から流れ出ている」「・・」
翔太は思いがけない景色に驚いた。
 「おう~始まっているぞ紅葉が・・」「ま~綺麗、なんて綺麗なん」
「これは空気じゃ小川向こうを見ろ、山上に沿い色変わりが違うがここ等じゃ
山桜も綺麗だろう」「そう言えば向かう先は平家の落人、どんな人が先祖か
わかる分期待しよう」「だな、正しくそうだなこの道が案内してくれるんだ」
二人の立つ位置は違えども思う先は同じだと、無論男と女思いは違う筈だが、
冴香は翔太と同じ空気が据える事に喜んでいた。
「おほう峠が見えたぞ」曲がりくねる山間の道、目の先には登り坂が迫る。
道を隠す様に紅葉が始まった木々の下でエンジン音だけが異様に響いて来た。
「ああ・・、峠、どれくらいあるんか」車が行き交わない車道の坂道を登る。
暫く暫上ると、「ああ~何となんと見ろ・・」
峠の頂上に車が出ると一瞬で景色が広がった。
「ま~う・つ・く・し・い・わ」驚嘆が冴香から出る。
「本当だ、峠の上から眼下が・・」
車を車除けの膨らんだ場所に止めると二人は車外に出て唖然。
山並みも眼下の小川も正面の山からは小さな滝が紅葉の葉から見え隠れする。
朝早くでも無いが、谷は霧に包まれて見えない。
絶景は紅葉だけで無い、辺りの山が色々な顔色を楽しませてくれるする様な
気がする場所、本当に翔太の田舎とは大違いと見た。
「行くぞ」「うん」車に乗込んでこれからは下り坂、冴香は車を撫でる様に
木の葉がひしめく道を目が知らずに追って行く。
 車が里に到着、だがあの峠から見下ろした光景は・・、
人が住んでいた様子は垣間見れるが住む場所としては余りにも無残、
田畑は辛うじて形だけは残す跡形だが、手が加えられていない事は明確、
其れほど谷そものの息使いは既に自然に戻ろうと動く谷に見える。
「冴香・・」返事はしないが何を聞こうとするのかは見える。
「此れが跡形ね」そう間をおいて返事する。
古びた立て看板が道横に立っていた。
矢印の方角を目を凝らすと霧の合間に建物が浮かんだ。
「あそこね」「・・」「おい、周りが見たいいわ、行こう」
車を降りずにその宿らしき建物を通り越して進んだ。
「成程ね、建物は古いわ、中は如何なのかね」「・・」
「でも確かに湯治には最高な場所よね」「うん、あ何か先に・・」
「ま~小川に見てみて何有れ」「え、何処」「車止めて」
冴香が出て見付けた物を指さす。
翔太も外に出て並び見る。
「ああ~わ・さ・び・だぞ」「・・」「これは自然かな」
「水が綺麗な証拠、冷たいのかな」「そうみたいだ、成程光江さんが
言わしたイワナ居そうだね」
其処から車を置いて二人は野生の草が道を覆い隠すところを歩いて行く。
「アソコ・・」「湯源かな」湯煙が立っている足は其処に向かう。
「古いよ、でも湯気が凄い、熱いのかしら」
言葉が終わらぬうちに翔太が指を入れた。
「く~五十度以上だぞ」「・・」驚きの声に冴香は絶句。
「なんと湯は有ったね」「うん・・」またも谷尾邦人足は向いた。
「あ、家の跡、石垣が、アソコにも向こうにも見える」
今は存在しないが、以前はこの石垣に囲まれて有ったのか証拠にその石が
覆う中には寒椿や桜の木だろうか紅葉の葉を靡かせていた。
「お兄ちゃん」「周りを探索だぞ」「はい」二人はまたも歩いて行く。
「え、何か匂うよ」「・・、あ山椒、後ろの山裾を見ろ」
「何あの木」「それは柚子の大木、此処は色んな物が残骸、人が住んでいた
証を残しているんだね」感慨無量、二人はまるで宝物を探す様に見て歩き,
感嘆や落胆等をしながら谷奥にまで来る。
「ふ~広いな、此れが平家の落ち部落か」後ろを振り返り翔太は呟いた。
 「うん、此処は平坦だぞ」谷奥に立つ場所が異様にただっ広い。
「何か家が在ったんじゃない」「そうか、例えば庄屋か」
「でも其れと思しきものが有った場所よ、谷が少し見下ろせるじゃない」
冴香はそう言い切る。
 其処に二人は腰かけて暫く周りを見渡す。
「此れが為れの里ね」「うん、どれ位住まれていたんだろう」「・・」
「でもなんか息がし易いね」「そう、霧が喉を潤して居るみたい」
「湯に硫黄の匂いが少なかった」「そう、これが自然に戻るなんて悔しいね、
未だ人を和ませる素材が沢山有るし」「だな」そう合槌を打ちながら頷く。
 「さてと向かう先に行こうか」「うん」二人は戻る道を変えて車にと進む。

            つづく・・・・。










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