異淫小説102弾《獣を潜ませ生きる・・49》

野田先生は翔太とはあまり面識は無い、有るのは仲間の智樹と正之だけ、
後はクラスが違うし、就職組と進学組との違いだ。
だが、智樹は同じ谷の仲間、其れで通学、アフタ-で仲良しだった。
「田中君は凄いな、話を聞いて驚いたぞ」「先生・・」
「あはっ、君にそう呼ばれてもピンとこんが」笑われる。
「そんでな、聞いたら、此処で何かしようとしていると、智樹が先日来てな
色々聞くから、何じゃと聞き返したんだ」「・・」
「それから君の話が出て、此処で何かしようと何がええかと僕に聞くんだ」
「あ、其れでは先生・・」「僕もあと少しで定年じゃろう、君たちが何か
したいなら協力はいとや~せんと答えた」「有難う御座います」
翔太は喜んだ。
 其処から色々な話を聞き始め、まるで。教室で居るような錯覚を受ける。
既に十年が経つ事が嘘のようにも思えるし、話を聞く中身がこれまた翔太
には新鮮な中身。
「此処で興す事は簡単じゃが、中身がのう、長続きと雇用じゃな、皆小作人
から這い上がった村の集りじゃ、中々仲間内でとは総上手くは運ばん、
個人主義の百姓、たとえは悪いが中身はそう見えるんだ。農協の御陰で其処
は何とかと考えてきんさったが、今じゃ君らの時代、其処で思わぬ君が
戻ったと聞いたんだ」「はい、何か出来ればここでもと・・」
「だってな、大阪は別にしても岡山の落合の話詳しく聞かせてくれんか」
其処から落合の事を話す
 「おう~、なんと其処まで出来るんか、凄いじゃないか、金は・・」
それも先生に話す。
「なんとなんと、では智樹君の話は嘘じゃ無いな・・」
「先生嘘つかんで」「嘘コケ」皆が大笑いする。
「じゃ、此処で何がええのか決めるのが先だぞ」「はい・・」
酒を飲む事を忘れて皆が聞き耳を立てる。
「野菜や果物も良いが、此処で何かを興すと思うならブランドが大事じゃ、
野菜などは直ぐにも作れるが、其処はたかが知れている、大勢が寄って
たかってする事じゃ無かろう」「そう思いますけ~」
「じゃ、何が良いのかと考えるんだ,土と土地は今は有り余るほど有るぞ』
「そうですね」「じゃ、其処を生かせ」「如何生かせますか」
「考えろ、あのな僕らがこれが良いぞとかあれこれ言っても身に付かん、
君らが探せや」「ええ~先生、薄情ですが」
「智樹、正之、君らは田中君に縋りついてて離すなよ、こんな良い条件は
滅多にないぞ、土地と土以外に一番大事な事は事業を起こす土台じゃ、
其処には必ず金が付きまとう、大々的に起こすなら尚更だ判るな」
皆がそろい頭を上下する。
「僕はあと一年、学校に居るからな、何時でも来てくれ」
「え、先生今夜は其れだけですか」
「そうじゃ、何を期待している、こんな田舎の定年まじか男に何が出来るんだ」
漸く酒を飲み始めそう言われた。
 その後いろいろな話をお互いするが、此処で何かする事の話しから
遠ざかっていた。
先生が帰られると智樹がしょげている。
「おい、大人じゃ、先生は」「・・」「阿呆、其処は違うが、
あの先生は日和見主義、わしらをけしかけて美味しい所と狙っておりんさる』
「言い過ぎだぞ」「いんや~其れくらいで丁度ええぞ、皆で考えようや、
此処は本腰で翔太に縋りわしらは動いて頑張ろう」
「さすが、雅満じゃがね、良い事いんさる」
こうして何とかするという事は決まり、後は何をするかが大問題だった。
 翌日、「お前、此処に居ても良いが多少はあの家で居ろ」
「叔母さん、邪魔か・・」「そうじゃ無いがね、世間に早く知らせる方が
ええけ、わしも触れ回らんと行けん」「ええ・・」
「其処じゃ、お前がアソコに居座ると話は本当なんだと思いんさろうがね、
智樹にも正之にもすでに言いふらせと空気を吹き込んでいる」
「うひゃ~、其れこそ敵わんな・・」
「わしが動き易いんじゃ、そうなると餌も持って行く、誰かにでも頼もうかな」
「え・・」「そうじゃろう、わしばかりじゃお前も面白くないがね」
「ええ・・」「任せや、悪いようにはせんけ~、ここ等じゃ芋姉ちゃん
ばかりだが、中身は美味しいぞ」「あはっ、負けるが」
そんな話をしてて、其れも有りかと思える。
 昼前、天気がいいので車であの冠山の麓の家にと向かう。
誰も居ない家、部屋は異様に寒い、炬燵に火を入れて座る。
其処で本を読む、何かをしなければと焦るが、おいそれとこれは良いという
事は、みつから無かった。
 「うん・・」見馴れ無い軽が庭に滑る様に入る、障子を開いてみる。
「あ、矢張おりんさったね、幸子さんから電話が来てどうしても行って
くれといんさるから、あんたが有名な翔太君かね」
「え、有名じゃ無いが、おばさんは誰ね」「おばさんか敵わんな」
「あ、御免、名前知らんけ~」
「私はこの先に住む、雅美です、出戻り女で~す」
「あはっ、笑えるが、ええ、若しかして山根雅美さんか・・」
「え、何で知っとりんさる、あんたとは四歳上じゃろう、学校は小学校は
別じゃし、中学は雅美が卒業すると交代に入学じゃろう」
「そうだけどな、中学でまげな女が居ると噂されていたが、そんでな
わしら悪が何度もあんたの家の風呂を覗こうと出向いていたんだ」
「え、ああ若しかして孝一か遣れんのう、でも見たんか」
「ううん、見れなかった、お母さんのは見たけど・・」
「あはっ、笑えるがね、そうかそうか、昔じゃね」
笑いながら土間から台所に向かわれる。
か 翔太は又炬燵、其処で本を読もうとしている。
「あんた、コ-ヒ-じゃ」「有難う賄かね」
「そうなるのう、でもあんた少しは金が有るじゃろうがね」「多少な」
「じゃ台所何とかしんさいや」「え、拙いん」
「便利が悪すぎじゃろうが、今でも此処は貯蔵の洞穴が有るけ~、其処まで
行かんと行けん、雪が降っているしのう、そんで台所土間じゃ拙いよ、
床を張り、其処にシステムキッチンで事は済む、便利じゃぞ」
「え、おばさん家そうしているん」
「あほな事、金が無いがね、システムなら良いなと思っただけ」
「そうか台所な、良いよ改装するか」「そうしてえな、其れなら通う」
「負けました、面白いおばさんだね」
「あのなおばさんは嫌じゃ、未だ其処まで行かん、雅美と呼んでくれんさい」
「はいはい」「もう、全く手に負えん男じゃね、今夜は何が良いの・・」
「何でも良いけど、一緒に食べようか・・」「え、良いけど賄だけだぞ」
「判っています」「じゃじゃ、すき焼き如何ね」「良いね」
「おう~じゃ買い物に行くけ~、金」笑いながら翔太は金を渡す。
笑顔で車に乗り込まれ、残りの金でなんか見繕い買って来るとも言われる。
呆れる程見事、翔太はしらずに見送り迄してしまう。

            つづく・・・・。