望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・22》

 軽い口を叩いて言葉遊びをしていた二人だが、互いに時間が気に為出した。
家族風呂は午後十時から十二時の予約、その時間が迫って来る。
『あのう・・』「え、ああ~時間に為りますね」「そうなるけど・・」
「嫌なら止めましょう・・」「ええ、貴方・・」
「だって、そんな気持ちなら楽しくないし、僕も今となって如何でもよく為り
出した・・」「ええ・・」「・・」「貴方、そうじゃ無いの・・」「え・・」
「あのね、時間が来るから胸が苦しく為り出したの・・」「嘘・・」
「ま~~酷い、本当だから・・」「そうかな、嫌に為られていると思えた・・」
「何で・・」「だって時間が気に為り出されていたし・・」
「それは娘を起こそうか如何し様かと・・」「え・・」
「この子私がいなくても寝ていますのよ、朝になると起きるけど、起きるけど、
寝着いた頃は起きないから・・」「あ、其れじゃ家族風呂・・」
「そうなんよ、連れて行こうか如何し様かと・・」「起きないんですか・・」
「今まではね、だから三十分くらいなら・・」「位なら・・」
「連れて行くほうが酷かと・・」「そうなるんですか・・」「ええ、今迄はね」
「じゅあ一時間は・・」「ええ、其処までは大丈夫かしら、判らないけど・・」
「・・」「何で、一時間も入って居れますの・・」
「其処は、如何かな、でも其処で酒を飲んだり寝そべり話もしたい・・」
「貴方・・」「だから色々と考えてて興奮して居ました」
「ま~、正直ね、聞く相手の気にもなって下さい、如何お答えすれば良いの」
「思うままが良いです、こんな事で嘘やしょうがないかと思うなら進まないで
おきましょう」「え・・」「そうじゃ無いかな、二人で居るだけなら未だ良い
けど、裸に為るんですよ」「あ、そうなるわね」
そんな会話をするが、総て虚しい、時間が経過する中で余計な話をしてしまう。
 「ねね、裸魅せた後は・・」「ええ、美佳さん・・」
「お聞きしたいのよ、貴方の本音」「あらら、其処までは・・」
「聞けないの・・」「勘弁して下さい・・」「じゃ、抱かれる事は有なの・・」
「え、其処も・・」「其処も、なんですの・・」「無いかも有かも・・」
「ま~成行ですよね」「そうなるけど、向かう前からこんな話有ですか・・」
「だって、美佳は決めているから・・」「どっちです」「どっちかな・・」
「ええ・・」「焦らしたいけど、其処は見透かれて居るみたい・・」「・・」
「そうでしょう・・」「其処か、痛い所だけど、今は挑む気が無くなりつつ
あるかな」「ええ」「そうなんです、最初は本当に其処までと色々考えて
いました」「貴方・・」「でも今は自分に正直に聞けば返事は最初の時より
変化しています」「変化・・」「行きずりの男女、その結末は抱合い、とね、
でも今はそうは思わなくなりました」「何でですの、魅力ないから・・」
「其処は有り過ぎですよ」「可笑しな事・・」
「可笑しいいんです、考えると益々そこの舞台に上れなくなります」「・・」
「何でかと今迄考えていたんですが、漸く見えました」「え、見えたの・・」
「行きずりではなく、今後も色々と付合い、舞ちゃんの成長を見たくなった」
「え、貴方」「仕事も伊豆でどんな話になるかは判らないけど、僕は自信が
有る、必ず、相手が貴方を求めますよ、其処は保証、だから今後の事には、
今夜の家族風呂は要らんかなと・・」「貴方・・」
「予約は良いじゃないですか、入らなくても良い、誰にも迷惑は懸らない」
「貴方、本気なの・・」「出来ればそのほうが良い、このまま旅して伊豆に
向かうほうが良いかと・・」「・・」返事は戻っては来なかったが、
気にしていた事が言えた澄人、ワインを一飲みして自分自身に頷いて居る。
 少しの時間、会話が途切れるが、其れも有かと気に為る時間を、
澄人はその姿で見送る様に時間の経過を過ごす。
 午後十時に為った。
「貴方・・」「え、ア時間か・・」「・・」「見過ごしましょう・・」
「・・」返事は又も帰ってこなかった。
ワインを飲むにつれ、この親子が本当に気に為っている事に気付かされる。
「あのう、此れから三十分、僕が話をします、その時間頂けますか・・」
「何か・・」「僕の事殆どご存じない、今話して置きます。もうこんな機会
は無いかと思われ、今だと決めた。今から話す事は、僕の旅に出た理由と、
此れからの事と加え聞いて欲しい」「心してお聞きする」そう返事をくれた。
 遂に澄人は話を切り出す。
一年前の家族の交通事故からその後の一年間の生活や、如何して旅に出よう
と決めたのかも、其れにアソコで出会う前に飛騨での事も包み隠さずに話を
し、飛騨に向かった理由も名古屋での事を追加で話、一息入れる。
「なんと・・、そうでしたの、知らないから、暢気に旅か、良いなと・・、
そんな事で一年間、辛かったと思います」「では続き・・」
そうして話は弟の交際相手の家族の話を始める、其れは美佳にも聞いて置き
たい事、澄人はなるべく詳しく話をする。
 「ええ~では、貴方・・株・・、大金じゃない・・」
「其処も家族が事故で無くなったための金、大事に育てて何かに使おうと」
そこからまた話を続けた。
 「ええ、では、ま~、名古屋で援けた家族のあの里・・、ま~有り得ない
けど有ったんだ・・」「ええ、親子ですよ・・」「・・」
そこは無視されて、澄人を睨まれる。
 また勝手に話を進める。
「待って、じゃその株話は、伊豆のお母様からなのね」
「ええ、だから、今だに弟と交代でお世話になっているんです」
「大金じゃない・・」「信じているんです、僕の金みたいだけど中身はそう
じゃ無いし、此れを如何するか悩んでいた矢先ですよ」「幾ら位なの・・」
「総ては言えないけど相当。株には半分以下しか今は出して居ません」
「ええ、なんと、本当なの・・」
「ええ、嘘みたいだけど、家族三人がしか亡くなったんですよ、保険や相手
からの慰謝料や諸々、相手は大手の会社のトラック、弁護士がしてくれた」
「・・」返事が戻れないほど驚かれる。
 「だから、今から向かう伊豆は大事な相手なんです」
「そうなるわね、そうね、関係を知らないから・・」
そう言われながらワインを負けずと飲まれる。
 「今度は僕の夢と趣味・・」「・・」
「僕は今回の旅は決まりが出来ていたんです、でも今は其れも破っています」
「ええ・・」「実は今から向かう母親と話しが出来ていて、旅も其のお母さん
から勧められたんです。必ず民家に泊まりなさい、ホテルや旅館は週に一度に
して、民家に泊って色々な話を聞いて、勉強してと・・」「あらら・・」
「それで旅に出た、だから車にはテントや寝袋、其れに野外で食事を作る道具
も多少積み込んでいるんです」「ああ、じゃ、車に箱が四個有ったけど・・」
「其れなんです・・」「じゃ私達の為に決まりを破った訳ね、御免なさい」
「いいえ、そうじゃ無くて言いたいのは、舞ちゃん」「え、娘が何か・・」
 そこから澄人の願望を話し始めた。
「ひや~、じゃ野外経験、いいや楽しいじゃないね、ねね、それ出来るの」
「ええ、何とか出来ます、野外でバ-ベキュウ-や、車で泊まる・・」
「素敵、あの子喜ぶ、ねねお願い旅館は此処だけにして、ね、車で寝よう」
「美佳さん・・」「そんな経験は舞には必要かも、お願い・・」
手を合わされる。
「では、明日富士山を見て回り、その後はそうしましょうか・・」
「はい・・、素敵よ・・」
 其処で話は合致・・。
「じゃ美佳の事も・・」「待って、其処は今は良いです。今の侭が最高、
過去は過去、何れ聞きたくなると聞かせてください・・」「貴方・・」
そう言いつつ、本音は聞きたかった。

            つづく・・・・。