望慕小説105弾《夢中を彷徨う・・24》

 夕方まで澄人は舞と砂浜で遊んでいる、家の中は既に母親の玲華さんが
戻られ、娘の美咲さんから話を聞きながら、チャッカリ玲華は美佳の品定め、
いつの間にか玲華が話を横取りし、美佳と話し込んで行く。
 家を飛び出して、美咲は今度は娘の舞と砂浜で戯れる。
横で笑いながら澄人が居た。
「良いわ、最高よ、お兄ちゃん、良い人見つけてくれたね」「え、では・・」
「大合格、逃がさないわよ、後は任せて」「頼むわ、良かったな舞ちゃん」
「良い事なんか・・」「ああ、親子で暮らせるぞ、仕事先が出来たんだ・・」
「うひゃ~ほんまか、お母ちゃんと一緒に住めるんか・・」「ああ、そうだ」
「うれちい~~」飛び込んで澄人に縋りついた。
 浜で座り、澄人は美咲から今迄の事を聞いている、家の部屋では未だ美佳と
玲華は話を続けていた。
『あのね、十年以上のベテランだし、技術は大阪で仕込まれているし、気が
良いのよ本当に助かる」「そうなるか嫌なら良いぞ」「嫌ならどうなるん」
「連れて戻るだけ」「え、じゃお兄ちゃん関係有るんか、聞いたら無いと」
「無いが、其処は別」「同じと思うけど、抱けば・・」「おいおい・・」
「うふっ、其処は嘉人さんと大違いよ」「ええ・・」
「だって、手が早かったわ・・」「あはっ、そうか・・」
そんな会話も今じゃ遠慮なく出来る間、弟の婚約者の美咲は快活な女性だ。
 漸く家の中に戻る三人、既に食事は運ばれて来ている。
皆でテ‐ブルを囲んで夕食、其処も賑わいは止まない、特に母親の玲華さん
が美佳を褒め称え、着付けや結婚式も賄えると大喜びされる。
「ねね、澄人さん、お願い預かる」「良いんですか、僕は大賛成だけど・・」
「じゃじゃ、小田原に店を出す、今手ごろな場所が開くのよ、手が足りない
から地団太踏んで見逃そうと考えていたの・・」「え・・」
「そうなのよ、腕は確かそうだし、なんといっても人間性が素敵よ、一度で
惚れたわ」そう言われる。
「じゃ、ママ、小田原・・」「ああ、出すよ、お前と美佳さんで仕切れや、
お前は熱海が有るから毎度とは行かない、面倒を見て二人でのし上がれ」
「ええ、他人事見たい・・」「ああ、此れからはそうなるよ・・」
「え、意味が・・」「あのな、店は既にお前の代じゃ、此れからは優秀な人
を頭にして、どんどん進め、結婚式場も出入りできるぞ」
「あ、そうね、じゃ美佳さん頑張ろう・・」
手を握り合い感激する美佳、泣いていた。
傍で寄り添う舞を見て皆も泣いてしまうもほろ苦いワインを飲んで行く。
 午後十時、舞が寝ると、今度は大人だけの宴会、其処でも話は小田原の
店の事、既に美佳は此処の人に可愛がられている。
「そうだ、あんたね、アソコどうなったん・・」「え、どこです・・」
「もう飛騨よ・・」「ああ、其処は報告していた通りですが・・」
「ええ、じゃ何も決めて来なかったん・・」
「だって、そのまま一度離れろと言われましたが・・」
「あはっ、もう聞いたかね美咲、弟と偉い違うが・・」
「本当ね、嘉人さんは後報告だけ、お兄ちゃんは仕上げもせずにか・・」
「言えるけど、そのほうが気に為るから良いかも此れからも造る、其処を
少し使おうかな・・」「良いわね、ママが仲間に入れば良いじゃないね」
「そう考えてたんだけど、こいつが此処に来るから計画が駄目になった」
「ええ・・」「そうか、旅行できなくなったね」
「そう、もう仕事手分けしていたの、相手の気持ちを探りもせずにこの男」
「え、無理ですよ、聞いて居ないし、そんな瞑りなら先に教えて下さいよ」
「だね、だね、今回はママが先走りかも、お兄ちゃんは悪くないわよ」
「だろう、吃驚するわ・・」四人で笑いながら酒が進む家の中だった。
 しかし、部屋ではこの話が終わる事は無い、此れからの動きは玲華が考え
ていた通りとは行かないが、澄人が回る先の出来事を詳しく、此処で話す
羽目に為る。
「駄目、総て言いなさい、此れから出会うに其処を知って置かないと拙いわ」
「良いですよ、僕が一人で回るし、アソコも戻るかどうか判らないし・・」
「駄目~、もう勝手は駄目よ、麗華が居るし、此れからは何処までも繋がり
は持つからね」「ええ、お母さん・・」
「あんたね、其のお母さんって玲華の事かね」「はい・・」
「ええ~、もう酷くないかしら、ね~美佳さん・・」
「え、私に・・、そうですね、お母さんは可哀そう」
「だろう、そんなのにこいつは何時までもそう呼ぶんだから・・」
「仕方ないでしょう、弟の婿入り先が此処だったんだ、其処の主がお母さん
でしょうがね」「理屈は良い、今後お母さん呼ばわりは禁句、麗華で統一」
「・・」呆れる澄人の顔を見て、美佳と美咲は大笑いする。
 だが此処での話はさて置いても、澄人は最高な人に出会えたと感激、
弟が世話になっていた家族だけど、今はその弟がこの世に居ない、
だからこんな形で再会、しかも今じゃ、弟と違う立ち位置、株を買わされて
いるし、今度は女性の働く口が此処と決まった。
そんな繋がりは弟とはまるで違うと結果は同じでも其処は認めたかった。
 夜中遅くまで家から漏れる明かりは前の白い砂を色付したまま時間は経過
して行く。
漸く寝付いたのが午前二時過ぎ、片づける間も無く四人は倒れ込んでいた。
「いやだ~、お母ちゃん」「え・・、アま~寝た侭かね、大変、台所・・」
美佳が起きて顔を洗うと台所に立つ、人の家だから道具を探すのが大変、
何とか朝食をと頑張る、其れを見る舞も手伝ってくれた。
 午前八時、舞が寝た大人を片っ端から起こし、苦笑いされる中、
並んで洗面所、笑う顔が見えた。
其れから遅い朝食、驚きながら玲華は感激、みそ汁や卵焼きや、
魚の焼き物だけだが、其れが結構お良いしいから、美咲も大感激、
一番は澄人が驚いた。
(成程母親だわ・・、しかしこの家の母親は・・)
横目で見るが、其処は偉い違うと見た。
 この家の母親は家に閉じこもる女性じゃ無いとはっきりと見定める、
其れは良い事か悪い事か判断できないが、仕事柄そうなっているんだと
思うしかない、でも豪快さは認めざるを得なかった。
 楽しい朝食を終えると、なんと美佳を連れて家を出られる、
無論舞も同行、残された澄人一人、呆れる程残された姿が笑えた。
 「あはっ、余計もんか・・」苦笑いするしかない、今回は親子の住む町に
と為ろう、此処も自ずから通う事なる筈の家、此れからの舞ちゃんの成長が
見れる場所に為ると思うと、一人残されても文句は言えなかった。

               つづく・・・・。